ミス・フィンランドが
差別投稿をすることの深刻な意味

 フィン党は「真のフィンランド人党」を意味する党名で、メディアでは「右派ポピュリスト政党」に分類されている。トランプ大統領の誕生以降、ヨーロッパでも勢力を拡大している反移民隆盛の流れに乗った政党である。

 北欧はポリコレ(政治的正しさ)の伝統が強く、ジェンダーやマイノリティに対する意識が高い。2015年にドイツのメルケル首相が移民受け入れ宣言をしたときも、それを受けていち早く移民受け入れに名乗りを上げ、受け入れにも積極的だった。

 だが、現在ではヨーロッパ内の他国と同じように、移民政策に対する反感が徐々に強まっており、フィンランドにおいてフィン党の勢力が伸びているのもそのためである。

 それでも、平等思想が根強いフィンランドでは「差別」はご法度で、人種・民族・宗教・性指向などに基づく扇動や差別的表現は刑法や差別禁止法で違法とされている。「レイシスト」と名指しされることは、かなりの屈辱になる。

 フィンランドは文化的にロシアとスウェーデンの影響を受けており、とくにロシアとは過酷な歴史があるため反ロシア感情が根強い。したがって、平等思想の中でロシアは「例外的存在」といっていいだろう。

 それに比べると、東アジアへの反感はそれほど聞かれず、むしろ日本文化が好きな人が多いことでも知られている。

 私が2000年代に初めてフィンランドに行ったときは、駅のキオスクにフィンランド語に翻訳された日本の漫画が並び、若者が浜崎あゆみを聞いていた。国際的に人気になった「きゃりーぱみゅぱみゅ」の「PONPONPON」が海外で最初にヒットしたのはフィンランドだった。日本のサブカルチャーを積極的に受け入れてきた国の一つである。

 では、そんな国のミス代表や政治家がなぜ東アジアへの差別意識を表すつり目画像や動画を平気で投稿したのだろうか。

 ミス・フィンランドの女性のアカウントを見ると、「コソボがルーツだ」と紹介にある。移民1世か2世かはわからないが、フィンランドの文化と異なる社会で生活していた可能性がある。

 また、彼女をミスとして選んだ側も、「マイノリティ代表」という意識があったのかもしれない。

 なお、この女性は、「夕食中の頭痛への反応としてそのジェスチャーをした」と弁明し、不適切なキャプションは、本人の同意なしに友人が12月11日の投稿に追加したものと主張している。