「警戒すべき国」として
認識されつつある中国
ロシアほどではないが、フィンランドにも中国を警戒する空気は醸成されている。それはロシアが持つ「現状変更の悪意」「人権軽視」「権威主義」などとも重なっていることが大きい。
ただし、地理的に離れている上に経済的に結びつきが強いことで、「経済を優先するか」「人権問題を優先するか」で中国観は揺れ動いている。
また、フィンランドは人口500万人程度の小国であり、過去に大国から主権を侵害され、領土を失った経験がある。力による現状変更への恐怖や嫌悪感は、国民の意識の奥に深く刻み込まれているといっていいだろう。
中国にも無理やり併合されて人権を抑圧された人々がいることは知られており、「警戒すべき国」と認識されるのはごく自然なことだろう。
そのため、フィンランドにおける中国の存在は「ロシア型の脅威をもたらすもう一つの大国」として認識されている。ただ、アジア人国家であることから、「差別」と名指しされることを恐れて、批判しにくい空気がある。
「つり目ポーズ」騒動は
「ポリコレ疲れ」が生んだ反動か
また、フィンランド社会がいきすぎたポリコレに倦んでいる面があると考えられる。
フィンランドは北欧の中でも、人権や平等、差別表現に対する規範意識が極めて強く、一定の成果を上げてきた一方で、社会にどんよりとした息苦しさも生み出している。
意図よりも受け取られ方が重視され、一度「差別」と判断されると、手厳しい社会的制裁を受けることになる。また、基準があいまいであり、どこまでが許され、どこからが許されないのかが分かりにくい状況が続く中で、その反動から「あえて差別的なことを言う」「あえてタブーを破る」こと自体が政治的意味を持つようになっている。
中国や東アジアは、人権、文化、差別、表現の自由が複雑に絡み合うため、反ポリコレを可視化する象徴になりやすい。中国への表だった批判がやりにくいからこそ、反ポリコレを表現するためにあえてミス・フィンランド女性や政治家がそういったポーズをやった可能性がある。
フィン党の政治家は、過去の一つの事例で現在のことを全否定する「キャンセルカルチャー」に強く批判的であり、その裏には一つの画像投稿でミスが剥奪されたことに対する怒りがあったのだと考えられる。
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