任せるとは、何をいつまでにしなければいけないかを説明せずに単に人に振る、ということではない。結果が一定の基準を満たせる保証もないのに人にやらせるものであってもならない。

「任せるだけで管理しないのは、レッセフェール――単なる放任主義だ」と言ったのはドイツの通販王ヴェルナー・オットーだった。

 管理をしなければ期待した結果は得られない。だからと言って、すべて自分でやらなければだめなのだと思い込んでもいけない。

 人に任せることと管理すること、どちらもバランスよく行うことが重要だ。

ウォーレン・バフェットの
完璧なまでの「任せるスキル」

 ウォーレン・バフェットは、この任せるというスキルを完璧なまでに習得したひとりだった。

 ソロモン・ブラザーズの不祥事(編集部注/米国債の引き受けに際して、他名義などを駆使して規定の規模をはるかに上回る買い付けをしていた、ソロモン・ブラザーズの不正取引)の後、バフェットはいまだ混乱のさなかにあったこの会社の新たなCEOにデリック・モーンを抜擢した。

 モーンはバフェットに尋ねた。

「だれを経営陣に入れるかについて、ご意見はありませんか?戦略面で何か私にご指示はありませんか?」

 バフェットの返事は素っ気なかった。

「そんなことを私に聞くようでは、どうやら人選を誤ったようだ」

 それだけぶっきらぼうに答えて、立ち去ったという。

 メアリー・バフェットは、義理の父だったバフェットを評してこう言う。

「ウォーレン特有のマネジメントスキルをひとつ挙げるとするなら、普通のCEOであれば不安に思うくらいまで、躊躇なく人に権限を委譲できたところだろう。彼は業種の異なる88の会社を経営しているが、これらを88人の有能なCEOたちに引き継いだ」

 バフェットはレクリエーションビークルメーカーのフォレスト・リバーを買収した際、同社CEOのピート・リーグルに、自分宛ての経営報告は年1回で十分だと言っている。

 また、バークシャー傘下の企業のCEOたちに対しては、自分のためだけに書類をつくる必要はないとはっきり伝えている。