「平成3年の確認事項」の条文が
多様に解釈できるという問題

 最初の問題は「現行制度の受益に基づく貸付料支払いは開業後30年間で終了」するという条文の解釈だ。「現行制度の/受益に基づく貸付料支払いは開業後30年間で終了」と読めば、31年目以降の貸付料は「受益」の概念を一切用いないこととなる。一方「現行制度の受益/に基づく貸付料支払いは開業後30年間で終了」と読めば、算定方法を改めた新たな「受益」に基づく貸付料が設定可能のようにも読める。

 JR東日本の立場は前者である。開業30年が経過した今、経営努力の結果や外部環境の変化などさまざまな影響があり、現行制度と同様にwith/withoutの収支差=受益を算定することは困難との見解だ。

 現行制度とは異なる手法で「受益」を算出すること自体は否定していないように受け取れるが、「確認事項」の(2)には「31年目以降の取扱いは施設の状態に見合った維持管理等に要する費用を根拠とする」として、貸付料算定の根拠は「受益」から「維持管理等に要する費用」に変更することと定められている。

 では「維持管理等に要する費用」とは何か。整備新幹線のレールや電線の交換など日常的な保守・修繕は受益の算定における費用に含まれており、JRの負担で実施しているが、問題は今後の大規模改修だ。東北・上越新幹線は開業49年を迎える2031年度から2040年度までの10年間で約1兆円を投じる計画であり、整備新幹線も今後、同様の工事が必要になる。

 国(鉄道・運輸機構)が建設する整備新幹線は国の資産であるため、JR東日本は提出資料で「整備新幹線の大規模改修については、国や施設所有者である(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構が実施することが原則と認識しています」と記している。

 長野オリンピックに間に合わせるため突貫工事で建設された高崎~長野間は、施工不良で修繕が必要な個所が散見されるといい、既に鉄道・運輸機構と個別に契約を締結し、機構の費用負担で大規模改修を行った事例があるという。今後の改修も同様の扱いとするべきというのが、JR東日本の主張である。

 ただ肝心の「施設の状態に見合った維持管理等に要する費用」をどう算定するかの合意は存在しない。JR東日本によれば、国交省は「確認事項」を合意した事実は認めているというが、30年前に契約した当事者は既におらず、条文の解釈基準は存在しない。

 FNNは「開業から31年目以降の貸付料は最低限の金額に留まるとした従来の主張」と報じたが、JR東日本が具体的な金額や算出方法を要望しているわけではない。「『平成3年の確認事項』に基づき、『施設の状態に見合った維持管理等』の範囲について関係者間で検討し、営業主体として引き続き整備新幹線区間の安全安定運行を行っていくためにも、老朽化が進む整備新幹線施設の維持管理に関して、関係の皆さまとともに検討することが必要と考えます」として、小委員会で議論すべき事項としている。

 これをあえて解釈するならば、大規模改修の費用は鉄道・運輸機構が負担するが、機構は維持管理の費用を根拠に貸付料を設定する、つまり、JR東日本が事実上、大規模改修の費用を負担することで、整備新幹線を永続的に維持可能なスキームを構築する、という意味になるだろう。

 一方、国交省は貸付料の計算期間を30年とした理由を、「対象区間に係る新幹線鉄道施設全体の平均耐用年数を30年」と算定し、老朽化による改修、更新費用を見込む必要のない耐用年数で区切った計算期間であると説明する。

 31年目以降は改修、更新費用を見込んだ契約に改定するという意味では「確認事項」と一致しているが、実際の大規模改修は50年を目途に行われているため、前提が異なっているという反論はあり得るかもしれない。