JR西日本とJR九州の
今後のヒアリングに要注目

「確認事項」の(3)は「上記費用が貸付期間中の定額の貸付料の額を上回っても、貸付期間中の定額の貸付料の額をもって上限とすること」とある。新たな貸付料はどのような算出方法を採用したとしても、30年目までの「定額の貸付料の額」を超えることはできないという意味だ。

 前回記事に記した通り、国交省は今回の貸付料をめぐる議論において、工事費の増額が見込まれる北海道新幹線新函館北斗~札幌間、北陸新幹線敦賀~新大阪間の財源として、将来にわたって安定的な貸付料収入を確保したいと考えている。

 そのためには31年目以降も貸付料を維持するとともに、利用が需要予測を上回っていることや、不動産やホテルなど関連事業収益に注目し、あわよくば増額したいと考えている。そうした中、(文脈は異なるが)貸付料の増額を認めないと明記した(3)は、増額に抵抗する強力な論拠となるかもしれない。

 JR東日本の防衛ラインがどこにあるのかは分からない。まずは「受益」を根拠とした貸付料算出は30年目で終了するという(1)が認められるか、認められたとして(2)の新しい根拠はどのようになるか、(1)(2)がどうであれ(3)が守られるか、という多段階の防衛ラインになるだろう。

 今後、JR西日本とJR九州のヒアリングが行われるが、現時点では、両社がJR東日本と認識を共有しているかは不明だ。自社エリア内の整備が終了したJR東日本に対し、JR西日本は敦賀~新大阪間、JR九州は新鳥栖~武雄温泉間という未着工区間を抱えている。

 貸付料の負担額も、JR東日本が511億円、JR西日本が173億円、JR九州が2.1億円(この他、経営安定基金で年額102億円分を先払い済み)と大きく異なる。30年を迎えるのも多くが2040年代であり、喫緊の問題ではない。「本丸」の敦賀~新大阪間延伸を抱えるJR西日本が貸付料の削減より財源確保を優先し、JR東日本の防衛ラインの遥か手前で妥協する可能性もあるだろう。

 だが、JR東日本は最初の整備新幹線区間である高崎~長野間の「確認事項」は、その後に開業した整備新幹線にも適用されると認識している。そうなると(行政契約として締結しているかは別として)JR西日本、JR九州も同様の認識をしているはずで、両社が今後のヒアリングでどのような主張を展開するか気になるところだ。

 今からすると「合意事項」はJR東日本に有利過ぎるかもしれないが、運輸省としては整備新幹線の第一歩として高崎~長野間を実現するために、JR東日本の同意を得なければならなかった。内容がどうであれ、国と交わした契約が反故にされれば、今後の鉄道行政に大きな禍根を残す。JR東日本としても、今回の議論が他社を含む全路線に影響するだけに、安易な妥協はできないという立場だ。

 報道だけを見ると、JR東日本が35年前の契約を盾に貸付料を値切っている印象を受けたかもしれないが、同社には同社なりの理屈と正当性がある。今回はJR東日本の主張を整理したが、これから国交省の反論があるはずだ。国有財産をめぐる政治マターだけに、国交省が強引に契約をひっくり返す可能性もある。今年も整備新幹線問題から目が離せない。