JR東日本と運輸省が
合意した契約内容とは

 最初の整備新幹線区間である北陸新幹線高崎~長野間は、1989年8月に高崎~軽井沢間、1991年9月に軽井沢~長野間が着工し、長野オリンピックを4カ月後に控えた1997年10月に開業した。軽井沢~長野間着工にあたり、JR東日本と運輸省が合意したのが「平成3年の確認事項」だ。

 同社の提出資料によると、契約の内容は以下の通りだ。

(1)現行制度の受益に基づく貸付料支払いは開業後30年間で終了すること
(2)31年目以降の取り扱いは「施設の状態に見合った維持管理等に要する費用」を根拠とすること
(3)上記費用が貸付期間中の定額の貸付料の額を上回っても、貸付期間中の定額の貸付料の額をもって上限とすること
(4)整備新幹線施設を譲渡することはないこと

 1992年、1996年、1997年にも運輸省と有効性を確認しており、その後に開業した整備新幹線も含め、現時点においても「有効性を疑う余地はない」と主張する。

 整備新幹線スキームはただでさえ難解だが、この条文の解釈は輪をかけてやっかいだ。主な論点となる「現行制度の受益に基づく貸付料支払い」「施設の状態に見合った維持管理等に要する費用」について、現行制度を確認しながら確認していこう。

 まずは「受益」だ。整備新幹線の受益とは、「新幹線を建設する場合(with)」と「しない場合(without)」の収益の差を意味する。具体的には新幹線の開業によって得られる収益(関連する在来線も含む)と、並行在来線の経営分離による収支改善(赤字減少)を合計し、受益の範囲内で貸付料が決定する。

 JRが建設を拒否したため公共事業として推進された経緯をふまえ、JRは建設のリスクを負わない代わりに、受益は使用料として国に支払う仕組みとなった。他に貸付料を算出する方法がないため、31年目以降の議論においても「受益」が前提になると思われてきた。

 実際、国交省鉄道局長は2015年に「30年経過後においても、受益が発生する限りはその範囲内で貸付料をいただくという考えに変わりはございません」と発言しているし、JR九州の青柳俊彦社長(当時)も2019年に「受益分や保全コストを30年と同様に計算した上で、受益の範囲で50年支払うという考え方はある」との見解を示したことがある。