わたしは「証拠の提示」「矛盾の指摘」「選択肢の提示」を通じて、協力者の心理を揺さぶり、真実を引き出した。

バレないうそをつくには
整合性よりも空気感が大事

 うそをつかれることがある半面、こちらがうそをつかなければならないときもあるだろう。うそは使いようによって、大きな効果がある。

 とはいえ、うそは「便利な道具」ではなく、信頼を失う大きなリスクを伴う「最後の武器」だ。

 私は外事警察時代、潜入先で身分を偽る必要があったが、どんなときも「相手に不必要な迷惑をかけない」ことを第一に考えていた。普段から誠実に接していれば、たとえうそをつく場面が訪れても、不自然さを悟られにくい(初頭効果)。

 逆に、小さなうそを乱用すれば、「この人はいつも何かを隠している」と見抜かれ、信用を失う。うそは切り札だ。むやみに使えば、その価値を自ら失わせることになる。

 うそを成立させるのは言葉ではなく、空気だ。外事警察時代、先輩にこう言われた。

先輩:スパイにとって言葉は武器だ。刃物より静かに相手を切り崩す。

勝丸:会話だけで情報が取れるのですか?

先輩:警戒を解くのが仕事だ。まずは「話させる」。話す人間は必ず何かを漏らす。

勝丸:うそをつくのですか?

先輩:つく。ただし、相手が望むうそを。人は自分が信じたいことしか信じない。おまえはそれを見抜き、差し出すだけだ。

 この言葉で、わたしはうその本質を学んだ。重要なのは「完璧に演じること」ではない。「この人は誠実そうだ」と思わせる空気をつくることだった。

 表情、声のトーン、間の取り方、視線――すべてが「本当らしさ」を補強する武器になる。

うそがバレたときの
言い訳も用意しておく

 うそのリスクは「ついた瞬間」ではなく、「バレた瞬間」に爆発する。わたしが徹底していたのは、「うそが露見した場合の対応を常に想定しておく」ことだった。

 言い訳を重ねれば信頼関係は崩壊し、取り返しがつかなくなる。一方で、バレたら即座に謝罪し、必要なら事実を訂正すれば、傷は最小限で済む。