さらに「報酬以外の形で支援できる方法を探そう」として、増額できずとも努力と結果を示し、信頼関係は維持された。

ただ拒絶するのではなく
共感や協力の意を示す

 断る際に最も避けるべきは、感情的な拒絶である。重要なのは「なぜできないのか」を論理的に説明し、可能であれば代替案を添えることである。

 たとえば、ある大使館職員から「犯罪歴を照会してほしい」と依頼された際、「現行法および内部規則により、第三者への犯罪歴提供は認められません」と明確に伝えた。

 さらに、「必要であれば外務省を通じた正式照会であれば対応可能です」と具体的な手続きを案内した。こうすることで、「断った」という印象を最小限に抑え、むしろ誠実な対応として信頼を高めることができた。

 繰り返しになるが、無理な依頼を断る際、最終的に大切なのは「信頼関係を損なわないこと」である。断ることは拒絶ではなく、「協力できる範囲を再定義する行為」である。

 ある国の外交官から痴漢事件の揉み消しを求められたことがある。わたしは「警察が直接介入すると国際問題に発展するリスクがあります」と説明し、「それよりも、弁護士を通じた解決が、後々望ましい」と提案した。

 結果として依頼は断ったが、相手は「リスクを避けるための助言」と理解し、信頼は損なわれなかった。無理な依頼を上手に断るためには、相手の目的を尊重しながらも、自分の立場や限界を明確にすることが不可欠である。

 つまり、「感謝→共感→制約の説明→代替案→将来の可能性」、という流れを意識して説得するとよい。

苦手な相手とも
うまく付き合う技術

 嫌いな相手でも、関係を完全に断つことができない場面は多い。職場・取引先・プロジェクトなど、合理性を優先すべき場では、感情を切り離した関係の設計が必要だ(メタ認知)。

 わたしも過去に、苦手な同僚と仕事を続けなければならない状況にあった。そこでわたしは、彼が好きな有名人の話題を事前に仕込み、会話の糸口をつくった。