難しい提案を通すために
上司をうまく説得するテクニック
上司に意見を通すには、論理だけでなく心理戦略が重要である。まず大切なのはタイミングの見極めだ。
上司が多忙なときや感情的なときに直球で意見を言うと、反発を招きやすい。雑談の流れや報告の合間など、自然なきっかけで切り出すことで、心理的抵抗を下げることができる。
さらに、上司の価値観を理解することも重要である。数字重視の上司ならデータを、リスク回避型なら安全策を強調し、上司の判断軸に合わせて話を組み立てる。ここで「こうすべきです」と断定するのではなく、「こういう選択肢もあります」と提案型で伝えると、相手の決定権を尊重でき、受け入れられやすい。
外国大使館から情報提供の依頼があった際、私は応じるべきだと考えたが、上司はリスクを恐れて断固拒否したことがあった。このとき私は、感情的に反論するのではなく、冷静に切り出した。
勝丸:管理官、意見を1つ具申させていただいてよろしいでしょうか。
上司:聞こう。
勝丸:この件、過去にも似た事例が複数あり、情報を提供したことで相手国からの信頼を得られた経緯があります。今回もその実績を参考にすれば、リスクを最小限にしつつ関係強化が可能です。
上司:……具体例があるのか。
勝丸:はい。すべてのファイルを精査したところ、A案、B案、C案がありました。
上司:わかった。ではA案を採用し許可しよう。
『スパイに学ぶ「あざとい」会話術 ビジネスに役立つ諜報員の言葉の魔法』(勝丸円覚、講談社)
過去の成功例を提示しつつ選択肢を複数示すことで、上司は「前例がある」ことで安心し、「自分で決定した」感覚を持ちやすくなり、一発OKをもらえた。
意見を通すためには、相手の懸念を先回りして解消する工夫も必要だ。予算・リスク・優先順位といった反論を想定し、その対策を先に示すことで説得力が高まる。
また、一度で意見が通らなくても、引く姿勢を見せて「再考の余地」を残すと、次の提案で通る確率が上がる(心理的リアクタンス)。
さらに、他部署や専門家の意見を味方につけると、説得の効果は倍増する。「自分1人の主張」ではなく「複数の視点から支持されている意見」として提示することで、上司の納得感を得やすくなる。







