外事警察の現場でも、会話が噛み合わない、価値観が真逆、感情的な摩擦が多い相手に無理に近づくことは、大きなリスクになる。

 協力者候補との面談中に、違和感を覚えたことがある。会話がまったく噛み合わず、相手の口数が極端に少ない。

「相性が悪い」と思ったわたしは、その場で無理に関係を深めようとはせず、すぐに上司に報告し、この候補者のリクルートを中止にした。結果として、潜在的なトラブルを未然に防ぐことができたのではないかと思う。

「違和感はシグナル」だということだ。感情ではなく事実ベースで観察することで、不必要なストレスやリスクを回避できる。「嫌い」かどうかではなく、「相性が悪い」という構造的な判断を心がけると、冷静な距離の設計が可能になる。

 相性が悪い相手とは、断絶ではなく「再設計」を意識した距離感を持つことが大切だ。

 このとき有効なのが、フェードアウトのテクニックだ。

1、接触頻度を減らす:対面→メール、週1回→月1回
2、話題を限定する:雑談を避け、業務だけに集中
3、第三者を介す:会議に他者を同席させる
4、役割を明確にする:「この件は○○部が担当です」と境界線を設定

 フェードアウトのポイントは、相手の貢献を認めつつ、「役割の終了=解放」として伝えることだ。これにより、相手の尊厳を守りながら安全な距離を確保できる。

 感情ではなく構造で捉えることで、罪悪感が減り、距離を取る判断がしやすくなる。「嫌い」ではなく「合わない」と定義することで、不要な摩擦を避けつつ客観的に対処できる。

 さらに、相性の悪さを逆手に取る戦略もある。

細かすぎる相手→「最終チェック・品質管理」、
疑い深くて批判的な人→「リスク管理・反証検討役」、
理屈っぽくて共感力が低い人→「データ分析・論理構築」、
自己主張が強くて協調性が低い人→「配送業務・専門職」

 などの役割分担により、お互いの強みを生かした効率的な連携が可能になる。

 発想の転換により、ストレスを最小限に抑えつつチーム全体の生産性を高められる。