そして、長時間労働による精神疾患が原因の労災と認定されたものの、この長時間労働の中に学会発表の準備や研究など「自己研鑽」がどこまで含まれるのかが争われることになりました。
以前から指摘されていた
「自己研鑽」と「業務」の曖昧さ
遺族側は、この自己研鑽を含めて100日連続勤務や自死直前の1カ月の時間外労働が240時間に及ぶとしているのに対して、同センターは専門医の資格を取るための研修プログラムは自主的な取り組みで労働時間に含まれないと主張しています。なお、この高島医師の同センター勤務の経過は表2―1の通りです。
保坂 亨『「休むと迷惑」という呪縛 学校は休み方を教えない』(平凡社)より転載
教育・研究活動における「自己研鑽」と医師としての業務との線引きの曖昧さは以前から指摘されていました。
そこで厚生労働省は2019年に、時間外に業務と関係のないことを上司の指示なく自主的に行えば「自己研鑽」と通達しましたが、現場の混乱は収まりませんでした。2024年4月から「医師の働き方改革」が実質的にスタートしたため、大学病院勤務医が時間外に本来業務として教育・研究を行えば「当然に労働時間となる」と改めて通達(2024年)したところです(*2)。
裁判では、まさにそれが争点として注目されることとなりました。専門職人材の育成という視点から考えると、「自己研鑽」は必須のものであることは言うまでもありません。が、これは対価を伴う労働なのかということを改めて考えてみたいと思います。
まずはこの事例の背景を理解するために、改革が進められた専門職の人材育成、ここでは一人前の医師になるまでの過程について概観しておきます。
*2 朝日新聞2024年4月24日「長時間労働大半は『自己研鑽』扱い」







