選ばれるクスリ#1Photo:RUNSTUDIO/gettyimages

米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の医薬品部門であるヤンセンファーマの日本法人が目下、大量リストラを遂行中。2023年も製薬業界ではリストラの嵐が吹き荒れるが、すでにリストラが済んだ大手の社員は、社員MR(医薬情報担当者)がほぼ絶滅に向かう社内計画が水面下で進んでいることに気付いた。特集『選ばれるクスリ』(全36回予定)の#1では、製薬業界の“花形営業”だったMRの今、そして残酷な未来を追う。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

400人規模の大リストラ
新部署は「まるで追い出し部屋」

 米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の医薬品部門であるヤンセンファーマの日本法人は今、社員も経営陣も混乱の渦の中にいる。

 発端は一昨年。アジアパシフィック地域の現地法人トップたちが毎年集う場で、日本法人は人員削減を実行することを約束した。日本はアジアパシフィック地域をけん引する存在だったが、その勢いを失いつつあった。主力の前立腺がん治療薬「ザイティガ」で特許切れが迫り、次の稼ぎを生む製品の投入が思い通りに進んでいない状況。てこ入れを拒む余地はなかった。

 人数こそ多くはないが、これまでも退職勧奨はやってきた。日本に戻ると、いつもよりも多いものの100人に満たない数十人規模で退職勧奨を行った。

 問題を持つ社員に加えて、上層部に従順なタイプの社員の肩もたたき、ことさら騒ぎにならずに人員削減はなされた。当事者がまだ多くなく、社内でも人ごととして無関心な者が多かった。

 翌年の会議ではさらにリストラを行う流れになった。これが騒動へと発展したのである。

 關口修平社長は2022年11月、組織再編に伴う「ポジションクローズ」を実施すると社内に通知した。要は大規模な人員リストラ。所属部門や担当業務のポジションがなくなることを理由に、指名して退職勧奨するものだ。

 リストラ対象は400人規模。約1100人を擁する営業部隊であるMR(医薬情報担当者)がメインターゲットになり、「免疫疾患チームはほぼ壊滅。がんチームも激減する」(同社社員)という。

 大半の社員は会社が回答期限とする22年12月までに割増退職金付きの退職に応じる意思を示した。しかし、一部の社員は反発した。

 年が明け2月に入ると、反発したり退職勧奨を受け入れなかったりした者は一つの部署に集められた。「まるで追い出し部屋だ」と同社社員は言う。

 次ページでは、ヤンセン日本法人におけるリストラ騒動の内幕、そして別の大手における「社員MR絶滅」への仰天計画を明らかにする。