大人の男が描かれた
寺尾聰「ルビーの指環」
今年(2022当時)も残すところあと2週間ほど。大きなイベントがあった前の年に比べたら、自分のことは何もしていないような気がする。とはいえ、トピックは色々あった。
6月には慶応大学にシンポジウム「松本隆〈言葉の教室〉」で招かれた。母校に錦を飾れたようで、あれはうれしかった。その模様は季刊「三田文学」に収録されている。やりたいことや信念はあったけれど実績などなかった大学生の頃の自分に見せてやりたい。
デビュー25周年のKinKi Kidsに「高純度romance」の詞も書いた。おかげさまで、デビュー曲「硝子の少年」から続く彼らのオリコン・シングル1位獲得連続記録は更新された。
「絶対に売れる曲を」、あるいは「1位を取る曲を」という注文に応えていた時期が20年ほどあった。制約は多かったけれど、結果を出せば、自由にやらせてもらえるようになる。「売れる詞を書く」ことは、ぼくにとって自由を勝ち取るための闘いだった。
年末の賞レースや紅白歌合戦はどこか他人事で、会場にいた記憶があるのは寺尾聰さんが「ルビーの指環」(1981年)でレコード大賞を取ったときぐらいだ。あの曲は、「ザ・ベストテン」で12週連続1位という大ヒットになった。「こども文化」の国の流行歌としては珍しく、大人の男が歌い、大人の男が描かれていたということが、あれほど売れた一因なのだろうか。
演歌に出てくるタイプとはまた違う、エドワード・ホッパーの絵に出てきそうな大人。森進一さんの「冬のリヴィエラ」や、南佳孝やクミコに作詞してきた一連の曲も、主役は大人の男女だ。気がつくと、Jポップ界にひとつのジャンルを築いていた。大人とこどもの違いについては、またいずれ。
1位を目指して作ったのに、結果を出せなかった曲も生んでしまった。近藤真彦の「ヨコハマ・チーク」は、「ルビーの指環」の壁を越えられなかった。その2年後には細野さんに頼まれてYMOの「君に、胸キュン。」を書いたけれど、これは松田聖子の「天国のキッス」(作曲は細野さん……)を抜くことができなかった。






