音楽好きの入口になった
はっぴいえんどのアルバム
『書きかけの…ことばの岸辺で』(松本 隆、朝日新聞出版)拡大画像表示
そんな時代を一緒に戦ってきた仲間が病に倒れたり退いたりして、いざ自分が70代になってみると、詞を書くという仕事はどんどん難しくなっていく。だけど、試練の場に自分を立たせておかないと老いぼれてしまう。それにやっぱり、創作するのはおもしろいし楽しい。
新しいもの、新しいもの、と追いかけ、ビッグメディアの力が圧倒的だった時代から、新旧関係なく世界中の音楽を手軽に聞くことができる時代、誰もが自由に世界へと発信できる時代に。“勝負”の土俵が激変してみると、改めてわかる。よいものを作っておけば、どんなに時代が変わっても支持される。
半世紀ほど前に生まれたはっぴいえんどのアルバムは、音楽好きにとって「入門書 兼 皆伝書」になった。京都で年若い店主がはっぴいえんどの曲から店名を付けた深夜喫茶を営んでいたり、異国から来た留学生が郷愁を共有して輪を広げてくれたりもする。
そんないま、明らかに勢いと力があるのはKポップだ。中学生の孫と「IVE」のメンバーについて盛り上がったりする。歌声がすばらしくて、この人に詞を書いてみたいと思わせる歌い手が、近ごろでは韓国にもいる。
2023年、ぼくは誰のために、どんな詞を書いているのだろうか。(2022年12月17日)






