2020年の国安法施行、さらに同年秋に行われる予定だった立法会選挙が「コロナ感染拡大」を理由に延期された後、翌2021年明けすぐに、民主派の大量逮捕が起こった。選挙への立候補予定者50人余りが、「議会で超党派タッグを組み、政府を追い詰める」という計画が、国安法違反とみなされたのだ。
民主派の「戦力」はこの拘束、有罪判決、入獄によって失われ、同時に民主派団体も次々に国安法をタテにした「見えない力」によって解散に追い込まれた。海外移民が激増したのもこの年だった。
さらに中国は選挙制度を改変したことは、すでに以前の原稿で触れた。立候補するには親中派の推薦が必要となり、民主党含め民主派は2021年の立候補者擁立を諦めるしかなかった。
その結果、民主党は政治参入への道を断ち切られた。今回解散を決めた後、「2021年の不参戦決定が『死因』だったのでは?」とメディアに問われた羅健熙・民主党主席は、「参戦しても、支持者の支持が得られるはずはなかった」ときっぱり答えた。
ジミー・ライ被告への有罪判決
その翌日15日、民主党の最大資金源とされた新聞「アップル・デイリー」の創業者でオーナーの黎智英(ジミー・ライ)被告に対し、「海外敵対勢力との共謀」罪成立などを理由に国安法違反で有罪判決が下った。
判決が明らかになるや否や、李家超・行政長官は「その行為は恥ずべきもので、悪意に満ちている」と黎被告を激しく非難。これに続いて香港政府高官や中国政府直属機関も異口同音に、黎被告を「海外勢力に頼り、国家安全を危険にさらした『反中乱港の首謀者』だ」と罵るキャンペーンを展開した。
78歳になる黎被告への量刑言い渡しは来年1月に行われる。国安法の最高刑は終身刑で、もとより同被告をターゲットにして制定されたと言われる国安法だけに、いかなる厳罰が下されるかが注目されている。
こうして、中国政府は立法会を手中に収めた。民主派閥は解散した。そして、黎被告を有罪にした。とうとう香港のすべてを握ったと、満足感に浸っているかもしれない。







