これはつまり、今後「お上」の手配に反すれば、業界利益どころの話ではなくなるという判断がなされたことを暗示している。
英国を拠点とする香港人向けネットメディアによると、今回の選挙では初当選者が4割以上を占め、全当選者のうち、中国中央政府直属の政治機関である全国人民代表大会代表や政治協商会議の委員を兼任している人物や中国資本企業関係者の当選数が過半数を占めた。
江さんが当選した「功能組別」でも、定員約30人のうち過半数に当たる16人が、こうした中国の直属関連機関のバックグラウンドを持ち、さらに香港の伝統企業を代表する当選者はわずか3人となった。
議会を構成する過半数が中国系のバックグラウンドを持つということは、今後の立法会が中国政府の意図を色濃く反映したものとなっていくのは間違いない。1997年の主権返還当初に謳われた「香港人による治港」は、こうして「愛国者による治港」にすり替えられ、香港の利益よりも中国の利益が優先されていく構図が出来上がってしまった。
31年の歴史に幕を下ろした民主党
選挙で始まった12月は、香港にとっての「政治月」となった。
投票が終わった夜半には、火災現場そばの公園に山積みになっていた、市民が手向けた追悼の花束やメッセージの山々が、政府の手配で次々と廃棄された。その様子はまるで「選挙さえ終われば、用はない」と言わんばかりだった。
翌週14日には、香港最後の民主派政党「民主党」が特別会員大会で、31年の歴史に終止符を打ち、解散することを決定した。民主党は1989年の天安門事件に触発されて生まれた政党の一つで、設立2年目の1995年には現在の立法会の前身となった立法評議会議員選挙で勝利、第一政党となった。主権返還(1997年)後初の選挙(1998年)でも第一政党の地位を維持した。
その後、民主派の間でさまざまな主張や論調が出現し、また香港と中国との関係が深まる中で親中派政党が躍進して立法会内第一政党の座を譲ったが、それでも民主派閥内の最大政党であり続けた……2020年までは。







