「守る部分と変える部分が明確にあった」
メルカリ小泉会長が買収時から抱く思い
しかし、新たに鹿島の社長に就いたメルカリの小泉取締役会長は「鹿島として大事にしながら守っていく部分と、変えていかなければいけない部分が明確にあった」と買収時を振り返りながら笑う。
「いわゆるジーコスピリットや、黎明期から積み重ねられてきた歴史に象徴される『鹿島らしさ』は絶対に失ってはいけないと思ってきましたし、一方で何もしなければ置いていかれるほど変化が激しいフットボールの世界で、常に成長していこうといまも社員が日々努力している。
それらがこのタイトルという形になってよかったと思うし、一個取ると二個、三個と取りたくなるのも人間の性ですよね」
鹿島がリーグ戦を制し、悲願の初タイトルを獲得したのが1996シーズン。翌年にはヤマザキナビスコカップ(現・YBCルヴァンカップ)と天皇杯で優勝し、その翌年には2度目のリーグ戦優勝とタイトルを積み重ねた。黎明期と同じようにタイトル獲得への飽くなき思いが再び頭をもたげている。
そして、9シーズンぶり9度目のリーグ戦優勝までの軌跡を振り返れば、四字熟語の「温故知新」がぴったりと当てはまる。単なる懐古主義に浸るのではなく、過去の史実から新しい知識や見解、道理などをあらためて見つけ出し、未来に活かす前向きな視線はくしくも同じ方向へ向けられていた。
実は鈴木と中田氏、小泉社長は優勝を決めた直後にまったく同じニュアンスの言葉を残している。
「今シーズンはアカデミーが本当にいい循環を見せているので、本当に楽しみしています」
期待通りに鹿島アントラーズユースは21日の「高円宮杯 JFA U-18プレミアリーグファイナル」を10年ぶりに制覇。18歳以下のユースチームが臨む全国規模の大会で、史上初の年間三冠を達成したチームからは来シーズン、主軸を担った2人が晴れてプロ契約を結んでトップチームに挑んでくる。
小泉社長は「新しい鹿島」の一環として、アカデミーへも積極的に投資してきた。数年後のチームを担う10代のホープたちも腕をぶしながら、鬼木監督が目指すより高いレベルへの成長も加速させる。復活を告げる優勝も通過点。鹿島は「温故知新」を合言葉に、さらなる高みへ駆けあがろうとしている。







