古き良き年賀状が
富裕層の「縁」をつなぐ
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富裕層にとって、最大の資産は金融資産ではありません。人と人との信頼関係、いわゆる人的資本は、事業の継続や新たな挑戦の成否を左右する極めて重要な要素です。
経営者仲間、顧問税理士や弁護士、長年付き合いのある金融機関、専門家、そして家族ぐるみで付き合う友人たち。どのタイミングで、誰がどんな情報を運んでくるか。困難に直面したとき、最初に誰が手を差し伸べてくれるか。新しい機会が生まれたとき、真っ先に誰の顔が思い浮かぶか。こうした「ご縁の質と量」が、長期的な富の形成に大きな影響を与えます。
行動科学の知見を踏まえると、人間関係が長続きし、信頼が深まっていく背景には、「小さな好意の積み重ね」と「負担の少ないやり取り」が大きく関係していることがわかっています。年賀状は、まさにその条件を満たすコミュニケーションです。
相手の時間をほとんど奪わずに、自分の感謝や敬意、近況を簡潔に伝えることができ、しかもはがきという形で、しばらく相手の生活空間に残る。
この「軽さ」と「残り方」のバランスこそ、富裕層が年賀状を「アナログなご縁を守るためのツール」として評価している理由だと言えるでしょう。
実際、富裕層のお客様のもとには、毎年大量の年賀状が届きます。そこには、長年の付き合いのある取引先や専門家だけでなく、かつての部下や同級生からの年賀状も含まれています。
お客様が年賀状の束をめくりながら
「そういえばこの人には、あの案件で相談してみても良いかもしれない」
「今年は久しぶりに、この人と会う機会をつくろう」
と口にされる場面を、私は何度も見てきました。
そのきっかけになっているのは、華々しいプレゼンテーションではなく、一枚の葉書に添えられた、誠実な一行なのです。







