「お金がない」は言い訳にならない
メディア出身の社長が決意したこと

 必然的に高年俸の外国人選手や有名日本人選手はなかなか獲得できない。それでも水戸の小島耕社長は、昨シーズンの自動昇格を争ったV・ファーレン長崎が、得点王とベストイレブン、シーズンMVPを独占したマテウス・ジェズスら複数の外国人選手を擁する陣容と比較しながら胸を張った。

「外国人選手数人(の総額)でウチの先発選手の11人を賄えるというか、おそらくそれ以上に報酬で違いがあると思っています。それでもウチの選手たちは本当に堂々と戦ってくれました」

 昨年11月29日に10試合が一斉に行われたJ2リーグ最終節。キックオフ前の時点で2位だった水戸は、ホームのケーズデンキスタジアム水戸で大分トリニータに2-0で快勝。J1へ自動昇格できる2位以内を決めた歓喜のなかで、首位だった長崎が徳島ヴォルティスと引き分けて優勝も決まった。

 これも2024年度の数字となるが、長崎の売上高は23億5200万円、チーム人件費は15億1900万円といずれも水戸を大きく上回る。それでも最後に笑った小島社長は決意を新たにしている。

「この瞬間から少しだけ、ちょっとだけ鼻を伸ばして言わせてもらえれば、お金がないから勝てない、というのはもう言い訳にならないんじゃないか、と。2025年のウチの予算は15億円くらいで、近年にJ1へ昇格するクラブのなかでは本当に最少だと思いますけど、それでもできるんだ、と」

 51歳の小島社長は、60を数えるJクラブの社長のなかでも異色の経歴をもっている。

 茨城県鉾田市出身の小島社長は、水戸市の茨城高校から明治大学をへて出版社へ入社。2004年には株式会社スクワッドへ移籍し、日本初のサッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊および編集に携わり、2010年からはスポーツ関連の映像製作会社へ創業メンバーとして参画している。

 水戸との接点ができたのは2019年4月。非常勤の取締役に就くと、翌年6月に代表取締役副社長に、さらに同7月には代表取締役社長に就任した。映像製作会社時代にたまたま会う機会があった水戸の西村卓朗強化部長と意気投合したのが、取材する側からされる側へと転じるきっかけになった。

「西村は『バジェット(予算)だけではサッカーの勝敗は決まらない』と最初に僕へ力説してくれました。同時に『そこには経営の力が必要なんです』とも言ってくれた。だからこそ僕はこのクラブの社長になろうと決めましたし、西村と2人でそれ(お金がなくても勝てる)を証明しようと取り組んできました」