小島社長は映像製作会社の次のキャリアがJクラブ社長になるのは「青天の霹靂でした」と笑う。

「自分としてはメディア側の人間として、日本のサッカーの価値を上げていく、といった仕事をしようと思っていましたから、社長というのは本当に想像もつかなかったですね」

廃校舎を利用した複合施設を
町民と共同の練習場として利用

 社長に就任した2020年7月はコロナ禍の真っ只中で、入場制限が設けられていた影響もあって公式入場者数が3桁だった試合もあった。収入の激減が経営危機の引き金とならないように、小島社長を中心に東奔西走していたのと同時に、クラブを根底から変える改革もゆっくりと進行していた。

 水戸は2018年から、水戸市に隣接する城里町の複合施設「城里町七会町民センター」を練習拠点としている。2015年3月に廃校となった町立七会中学校を、同町の要望を受ける形で居抜き物件として利用。旧校舎はクラブハウスへ、校庭は天然芝のピッチ2面を確保できる練習場へと様変わりした。

 廃校舎がリノベーションされた城里町七会町民センターは、町役場支所や公民館の機能も併設。チームの使用状況にもよるが、トレーニングジムや天然芝グラウンドは町民も利用できる。

 公共施設の有効活用を望む自治体と、低予算のなかでクラブハウスに隣接した練習場を探し求めていた水戸のニーズが合致。画期的な発想のもとで生まれた、J1を含めてトップクラスを誇る水戸の練習拠点は、プロの第一歩を充実した環境でスタートさせたいと望むルーキーたちを引きつける要因になった。

 西村強化部長はさらに、サッカー以外の部分でも選手たちの見聞を広げ、人間的な成長も促す人材育成プログラム「Make Value Project」も2018年に立ち上げた。頭文字を取って「MVP」と呼ばれるこのプログラムは、一回につき最大120分間の研修が、年間で同32コマにわたって課される。

 翌2019年からは1対1の面談も導入されるなど、学びの機会が多岐にわたる水戸の選手育成方法はどのように受け止められているのか。神奈川県の強豪・桐光学園高校から加入して2年目ながら昨シーズンのベストイレブンに選出され、年代別の日本代表にも名を連ね、オフにはヨーロッパのクラブへ旅立っていった20歳のホープ齋藤俊輔が言う。

「サッカーだけじゃなくて、一人の社会人としても歩んでいけるように、人間性の部分なども日々学べている。そこがこのクラブで若手が育っていく理由だし、本当に大きいと思っています」