『鬼滅の刃』は売り切れ続出!
峠の釜めしと人気作品がコラボ

 新業態に挑戦する一方で、本丸である駅弁の売り上げアップに向けた戦略も進めている。とくに、若年層の認知度を上げる取り組みに力を入れている、と高見澤氏は語る。

株式会社荻野屋六代目代表取締役社長・高見澤志和氏株式会社荻野屋六代目代表取締役社長・高見澤志和氏

「現在、展開しているのは人気コンテンツとコラボした峠の釜めしの販売です。第一弾は、2018年の『頭文字D』とのコラボ。人気作を通して峠の釜めしの認知度を上げるのを目的に実施しました。それをきっかけに声がかかるようになり、さまざまな作品とコラボした峠の釜めしを随時販売しています。SNSでは『コラボで初めて峠の釜めしを知った』という投稿も多く、これまでリーチできていなかった層に届いている実感はありますね」

『鬼滅の刃』や『葬送のフリーレン』などの人気作とコラボした峠の釜めしは、特製の掛け紙で包装されるだけでなく、容器の色もキャラクターのイメージカラー仕様に。なかには、即完売して入手困難になる商品もあるという。

 同様の取り組みは他社でも行われている。2025年には、関西を中心に展開する「淡路屋」の有名駅弁「ひっぱりだこ飯」が、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」を容器にあしらったコラボ駅弁を販売し、話題を集めた。

「コラボ駅弁を入り口に、幅広い層の食の選択肢に駅弁が加われば、市場全体にとってもプラスになるはず。駅弁は、空腹を満たすだけでなく、旅の一部になります。味だけでなく、どんな景色を見ながら誰と食べたか、どの土地の駅弁だったか……そうした思い出として語れるのが駅弁の魅力です。今後も、業界全体が一丸となり、先人たちが築いてきた駅弁という日本の食文化を未来につなげるよう尽力します」

 駅弁が姿を消せば、旅行の楽しみがひとつ失われる。市場が縮小している今こそ、駅弁の価値を改めて見つめ直したい。

<識者プロフィール>
高見澤・志和氏
株式会社荻野屋代表取締役社長。2000年慶応義塾大学法学部法律学科卒業。2003年に同社取締役として入社し、2012年に6代目社長に就任。