人の口に入れるものを提供する飲食店では、プロとして絶対に守るべきことがある。それは「予防」と「初動」の2点だ。

 第一に、「定期的に点検して記録する」こと。網戸、扉下、吸排気口、排水、壁床天井の隙間は、劣化すると一気に弱点になる。HACCPに沿った計画に基づき、定期的にここを点検し、是正し、記録に残す。このサイクルを回し続けることだけが、確率を下げる唯一の方法だ。

 第二に、「問題発生時に迅速に対応する」こと。侵入確率をゼロにできないとしても、客に出した後の対応はコントロール可能だ。

 新宿の焼肉店で批判を浴びたのは、ネズミの存在以上に、客が恐怖を訴えているにもかかわらず対応が遅れた点にある。直ちに提供を中止し、安全を確保し、誠意を持って謝罪しなければならない。マニュアルを作成して教育し、言語や文化の異なる従業員でも対策できるようにすることが不可欠である。

異物混入する店で食べたくない!
利用者が見抜くポイントとは

 では、異物混入に遭遇しないために、客側ができる自己防衛策は何か。

 まず、店の入口周りのゴミ、床の隅の汚れ、卓上調味料のベタつき、トイレの清潔感がチェックポイントとなる。これらは、その店のバックヤードの衛生文化を反映していることが多い。

 次に、繁華街の古い雑居ビルや、回転率が高い店舗で食事をする場合、どうしても構造的なリスクは高まることは心しておこう。

 そして、万が一違和感があれば、口に入れる前に申し出よう。その場で現物を店員に確認してもらい、回収と対応を求める。必要であれば保健所へ相談する。SNSへの投稿は事実確認の後でも遅くはない。まずは目の前の安全確保と、店側への事実通知による解決を優先すべきだ。

 繰り返すが、外食産業における異物混入は、完全にゼロにすることは難しい。しかし、述べてきたように飲食店や利用者の予防策はある。

 外食は、作り手の不断の努力で成立している産業だ。一方で利用者側も、衛生管理にはコストがかかること、そのコストを適正な形で販売価格に反映しなければ外食市場は衰退してしまうこと、現場を支える人材がいて初めて成り立っていることを知ってほしい。

 現代の外食産業に求められることは多いが、信頼を積み上げた店のみ生き残れるだろう。