「いやいや、そこは南鳥島で国産レアアースだろ!放射性物質をほとんど含んでないから精製が難しくないとニュースでやっていたぞ」という意見もあるだろう。もちろん、そうなればこれほど素晴らしいことはない。
しかし、その一方で2010年のレアアース禁輸のときから既に注目され調査が進んでいたように、15年が経過しても未だに実用化できていないという厳しい現実も直視しなくてはいけない。
海底6000メートルから泥をさらい精製して商業化することは並大抵のことではないし、そもそもできたとしてもそれが果たしていくらで取引されるのかという問題もある。
それは省レアアースのネオジム磁石や代替技術の開発も同じだ。日本企業各社が、レアアースに頼らない技術の開発に力を注いでいることは先ほども触れたが、コスト面や性能ではまだまだ課題がある。つまり、レアアースフリーが日本中の製造業に普及するまではかなり時間がかかる。電子機器などからの再利用も同じ理由で、すぐに広がるものではない。
海底資源、イノベーションでの問題解決というのは間違っていないし、国をあげて推進すべきものではあるが、いまそこで起きていることをチャラにできるものではないのだ。
「自国ファースト報道」とは真逆の言説に、気分が暗くなった人もいるだろう。こんな記事を書くライターは「親中」や「反日」に違いないと憎悪が込み上げた人もおられるかもしれない。
ただ、筆者がこのような話をしているのは「日本サゲ」をしたいからではなく日本がこの問題を乗り越えるためには、これくらいシビアな視点も必要だと思っているからだ。
先の戦争後、アメリカ側による日本の敗因分析にもあるが、我々は「敵」を過小評価する癖がある。多くの日本人が口にしないが、心のどこかで中国の技術力や産業を「下」に見ている。
しかし、中国の都市部の発展やハイテク分野の最新技術を見たら、もう日本が抜かれているのは明らかだ。まず、この厳しい現実を直視することから始めなくては、本当の意味ので日本の発展もない。
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レアアースに関しても、これを中東の石油のような「戦略資源」にしていくという方針は、1980年代の最高指導者・鄧小平氏が示している。
今の中国が好き勝手に振る舞えるのは、ハイテク産業が隆盛となれば、この資源と精製を支配した国が世界を支配するという長期的ビジョンに沿っている。つまり、非常に悔しい話ではあるが、中国は半世紀前に「先手」を打っていたのだ。
では翻って我々はどうか。1980年代に「世界一のものづくり大国」と胸を張っていたとき、レアアース確保のためにどれだけ動いたのか。15年前、「オールジャパンで中国依存を減らした」と勝利に酔いしれた後、中国の「レアアース精製支配」を防ぐために何をしたのか。
もちろん、2010年に89.8%だった依存度を、2024年に62.9%まで減らしたというのはオールジャパンの努力でありそれ自体は素晴らしい。しかし、昨年秋に重希土をオーストラリアから初輸入したり、海底6000メートルのレアアースを調査したくらいで「先手を打った」などと浮かれるのは、さすがに平和ボケがすぎる。
「日本スゴイ」系の大本営発表に国民がうっとりしているうちに実はどんどん劣勢に追いやられて、気がついた時は目も当てられない大惨敗、というのが日本が陥りやすい「負けパターン」だ。
「高市首相の反撃で中国涙目」などと奢り昂っているうちに、気がついたら自分たちが「涙目」に……なんてオチにならないように、用心していただきたい。








