サービス残業代全額は請求できなかった

「今は、労働時間の管理がうるさくなって、朝8時半すぎにならないと、作業用の端末を立ち上げてはいけなくなったんです。端末で打ち込めないので、とりあえずその前に、荷物を積み込むだけ積み込んで、時間になったら、端末で荷物のバーコードを打ち込むようにしています。

 本当は、7時半には端末が使えるようにしてほしいんです。そうすれば、8時には出発できて、午前中の配達に時間の余裕ができますし、終わりの時間も早くなります。ドライバーの本音は、早く出てきて、早く帰りたいんですけれど、働き方改革がはじまってから、会社の時間管理は厳しくなって、その分、仕事がやりにくくなってきました」

 宅配便のドライバーの1日のスケジュールを簡単に説明すると、まずは午前中に1回目の配達を行う。午後からは2回目の配達と同時に、コンビニや薬局などの集荷所から荷物を集めてくる。夕方から、3回目の配達に回る。それを1便、2便、3便と呼ぶ。ドライバーは1日、同じコースを3度回って、配達と集荷を行うのである。

 宅配ドライバーが顧客に届けることを、業界ではラストワンマイルと呼び、アマゾンをはじめとする各通販企業は顧客との唯一の接点として重要視している。ラストワンマイルで時間に遅れたり、荷物が破損したり、荷物が行方不明になったりしたら、それまでのおぜん立てはすべて水の泡となる。

 ヤマト運輸で、約230億円の未払い残業代の問題が発覚して、そのブラックな企業体質が広く世に知れ渡ったのは17年春のこと。ヤマト運輸は、アマゾンを中心とする通販荷物の激増で、現場に負荷がかかりすぎていたことを認め、受け入れ荷物の数量を抑制する総量規制と、それまで20年近くにわたって下落傾向にあった運賃の値上げ交渉、さらにドライバーの人員増員などを主軸とする改革案を打ち出した。

 小谷が、未払いのサービス残業代として受け取ったのは40万円台。