ドライバーは、荷物を相手先に届けることを“落とす”と呼ぶ。そして、彼らが一番嫌うのは、その日配達する荷物を翌日に残すことである。持ち戻りや残貨が多くなればなるほど、次の日の仕事がきつくなるからだ。許容量以上に残貨が増えれば、“パンク”して、荷物が運べなくなる、という緊張感をドライバーは絶えず抱えている。

 10時半、小谷はこう言った。「この時間は、まだできるだけ、端末に出てくる《残》の数は、見ないようにしているんですよ。見ると、どうしても焦る気持ちが出てしまうんで」

 その後に、団地に配達に行くと、不在だった。外では住民総出で草刈りの真っ最中だった。

 小谷はその草刈り作業の中に、荷物を抱えて入って行って、「336号室の×△さんは、参加してませんか?」と声をかけ、当人を見つけ、荷物を手渡す。

 小谷が担当するコースは、坂が多く、道路も狭い。しかし、すべての道を把握した小谷は、一度も地図を見ることなく、次々に配達先に向かう。配達するときは、常に小走りだ。団地の階段も駆け上っていった。

 私の腕時計が11時に、「ピッピッ」と鳴ると、小谷が「11時ですね」と敏感に反応する。正午までに午前中の時間指定の荷物を配達し終わらなければならないからだ。

 小谷が車を運転する間、私はアマゾンの荷物について訊いてみた。

不在率の多さもドライバー泣かせ

「アマゾンの荷物ですか?正直言って、勘弁してほしいですね。ほとんど、午前中の時間指定ですし。夕方に入ってくるアマゾンの時間指定の荷物は、働き方改革後は、デリバリープロバイダという中小の配達業者に任せることになっているんですけれど、うちの地域では、まだはじまっていません。