「潜入取材の達人」が、アマゾンの国内最大級倉庫である小田原物流センターに突撃!「東京ドームの4個分」というセンターの中には、アルバイトの働きぶりを見張る仕組みが張り巡らされていた。
※本稿は、横田増生著『潜入ルポamazon帝国』(小学館)の一部を再編集したものです。
夏は救急車で搬送される人が出る現場
偉そうに語る「リーダー」とは何者か
私が小田原物流センターで働いたのは、2017年10月14日から同月27日までの約2週間。ピッキング作業をはじめるとすぐに、4階にあるビン(棚の1つの間仕切り)に何が収納されているのかを、取り出して調べてみた。
そこには、文房具から車用品、おもちゃや美容品まで、ありとあらゆる商品が、棚の中に詰め込まれている。隣のビンを探せば、まったく別の商品が次々と出てくる。その商品の種類の数は想像がつかないぐらい多い。書籍のネット通販としてスタートしたアマゾンが、今では、どんな商品でも取り扱う“エブリシング・ストア=Everything Store”となったことを改めて実感した。
送迎バスに乗って、初日の午前8時半すぎに物流センターに到着すると、2階の休憩室で派遣会社エヌエス・ジャパンの女性担当者が、私の顔を見つけて声をかけてくる。
「おはようございます。今日からよろしくお願いします」
彼女の態度に威圧感はない。言葉も丁寧である。こちらも同じようにあいさつを返す。
私がカットソーの上にセーターを着ているのに気づくと、彼女は「それじゃ作業をはじめるとすぐに暑くなりますよ」とアドバイスしてくれた。純粋な親切心から出た言葉であることは、その表情からわかった。
しかし、以前に潜入したときは冷暖房完備という触れ込みであったにもかかわらず、冬はまったく暖房が効かず、下着を重ね着しても、凍えながら作業をした記憶が鮮明に残っていたので、彼女の言葉を無視してセーターを着たまま作業現場に入った。
しかし、結果は、ピッキング作業を30分もしていると、セーターを脱ぎ、カットソーの袖をまくらなければならないほど暑くなった。長期で働いているアルバイトによると、「冬に汗ばむのはどうにかなるのだが、夏になると救急車で搬送される人が出るほど暑くなる」という。
作業現場に行くと、青のビブス(ゼッケン)に《リーダー》と書かれた40代のおかっぱ頭でメガネをかけた女性が、作業初日のアルバイト約10人を集めてこう言い放った。
「PTGで85%以上は必達の目標値です。皆さんは作業開始の10日後にはこの数値が75%に達するよう努力して下さい。目標値を超えられない場合、われわれリーダーと、どうすれば生産性が向上するのかという話し合いを持たせていただきます」
この人は、陰気で、かつ権柄尽(けんぺいづ)くな態度である。
偉そうに語るこのリーダーとは何者なのか。