「サービス残業代を正直に全部申告したら、倍の80万円にはなっていたでしょう。だけど、そんな高額を請求すれば、すぐに支店長に目をつけられて、最悪、別の支店に飛ばされることもあります。辞めるつもりの人じゃないと、全額は請求できなかったと思いますよ。だから、みんなが全部請求していたら、総額は200億円台じゃ利かなかったんじゃないですか」と小谷は言う。

 その後、多くの荷主がヤマト運輸から強引な運賃の値上げを迫られ、“ヤマトショック”と呼ばれた。その裏側にあったのは、アマゾン発の個人宅向けの荷物だ。その個数は、業界トップであるヤマト運輸の総取扱個数である18億個のうち、3.5億個ともいわれた。

 個数の多さ以上に問題だったのは、その安い運賃だ。1個当たり280円といわれ、どれだけ運んでも利益が出ない低水準の運賃だった。そのため、ドライバーの増員や委託のドライバーと契約することもできず、そのしわ寄せが、ドライバーのサービス残業となって表面化した格好だ。

「あれ以来、本社はマスコミに対し、カッコのいいことを言っていますが、現場のしんどさは、ほとんど変わっていません」と小谷は言い切る。「上からは、残業はするな、休憩時間は取れ、委託のドライバーは使うな、そうして短くなった労働時間を埋め合わせるために生産性を上げろ――ですから。

 結局、僕らのようなフルタイムのドライバーを増やして、営業所に増員しない限り、忙しい現実は変わらないのに、ドライバーの数は増やさず、表面だけを取り繕おうとするから、余計にややこしくなっている気がします」

配達先とは顔なじみのヤマト

 小谷が10年以上担当している配送エリアは、民家や団地がほとんど。企業などの法人顧客はほとんどない。ということは、1軒に1個ずつ運んでいくしかない。

「僕の手にするインセンティブ給の額は、月に多くても6万円ですかね」と小谷は苦笑いを浮かべながら教えてくれた。