なぜ「変えたいのに変えられない」のか
大学DXの課題は何か。藤本さんは、「99%は人だ」と言う。
国立大学の場合は、2004年度の法人化以降、運営費交付金の減少と横ばいが続いた。2026年度は対前年度188億円増額の見通しとなり、国立大学協会会長が「これほどの大幅な増額が措置されたのは、法人化以来初めてで、極めて画期的なこと」とコメントしたが、長年このような状況が続いたため、「求められる水準」と「投入できるリソース」の差が広がりやすい。
業務のやり方を変えたくても、研修や移行期間の二重運用といった切り替えコストがかかる。その余裕はないから、紙の運用で何とか回してしまい、改善は先送りされていく。現場には、“前に進めたいのに進めない”もどかしさが積み上がっていく。
意思決定のプロセスも重い。会議の前に関係者を回って説明を重ねるのは、認識のズレを防ぐためだ。しかし、調整に時間がかかるうえ、会議をする頃には既定路線ができあがっていることも少なくない。
ミドルマネジメント層の負荷も大きい。法人化以前の国立大学は公務員組織で、マネジメント経験を積む機会が少なかった。そこへ業務の高度化や人員減が一気に押し寄せ、現場と上層部の板挟みになっている。問題が起きれば矢面に立つが、うまく回せていると目立たない。報われにくい立場だ。
複数の大学でDXを支援する寺尾健志さんは、「今は特にマネジメントの課題が大きい。働く人のやりがいやモチベーション維持に十分取り組めている大学は少ないのでは」と語る。
東北大学 経営戦略本部 データ戦略室 特任准教授/寺尾コンサルティング 寺尾健志さん Photo by M.S.
気持ち悪いから変えたい
閉塞感は相当なものだ。それでもDXを進めようとするのはなぜなのか。仕事だから? いや、人は環境に順応する生き物だから、定年までやり過ごすことはできるだろうし、そんな人は世の中にたくさんいるじゃないか。藤本さんは少し考えてから、「言葉が正しいか分からないけれど、私はそれが気持ち悪いから」と答えた。







