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2026年のエネルギー産業を動かす起点は、エネルギー自身ではなく「AI産業」や「金融市場」などの外部要因になる可能性がある。「高市政権の誕生」がエネルギー産業における課題解決を加速させる要因となり得るかも最注目点の一つである。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、「2026年エネルギー業界の10大テーマ」の前編として、5つのテーマを取り上げる。(アクセンチュア 素材・エネルギー本部マネジング・ディレクター 巽 直樹)
2025年予想は「大転換の年」
おおむねその通りに展開
エネルギー業界の翌年の重要テーマを選ぶことも今回で3年目となる。昨年の今頃、米大統領選の結果を受け、2025年は「大転換の年」になると予想したが、おおむねその通りの展開となった。もっとも、最大の想定外は、日本における「高市政権の誕生」であったが、この流れがエネルギー産業における課題解決を加速させる要因となり得るかは、来年の最注目点の一つになる。
26年のエネルギー産業を動かす起点は、エネルギー自身ではなく「AI産業」や「金融市場」などの外部要因になる可能性もある。特に金融市場は、現在の「AIバブル」が、「ITバブルやリーマンショック級の崩壊を迎えるか否か」におびえ続ける年になるだろう。バブルは終わってみなければ分からないが、その動向がマクロ経済全体を左右する。
すでにインフレと「金利のない世界」の終わりは、日本の実体経済を直撃している。金利上昇と資材高騰は、特に洋上風力のような巨額の初期投資と補助金を前提としたプロジェクトを、採算が取れないレベルにまで追い詰めた。マクロ経済環境の大きな変化が、エネルギー事業の存続を決定づける時代となったが、コロナ禍以降で最大となる21.3兆円規模の経済対策が実施されるとインフレはさらに加速する可能性もある。
AIの「電力爆食い」による需給ギャップに対する懸念は、数年前から指摘してきたが、エネルギー価格を高騰させる大きな要因となっている。この問題は、AIの成長モデル自体が変わらない限り、終わりが見えない構造的問題だ。よって、前述のようなマクロ経済の動向に注視せざるを得ない。
このAI起因の電力高騰は、26年11月に予定されている米中間選挙の争点として浮上する可能性がある。懸念されるのは、民主党が前政権でのIRA(インフレ抑制法)などによるNet Zero(ネットゼロ)重視のエネルギー政策を棚に上げ、エネルギー価格の問題においてAIをスケープゴートにする政治的な立ち回りだ。
この論争自体は米国の国内問題に過ぎないが、選挙結果次第では米国のエネルギー政策が再び迷走しかねない。そこでこの前編では、こうしたマクロ動向を左右するテーマを5つ取り上げたい。







