さらに現実的な話をすれば、内部通報窓口などに、「あの人のやっていることはおかしいのではないか」という、情報提供が寄せられることがある。その情報に一定の信頼性や合理性があると会社が判断すれば、調査を開始せざるを得ない。

 そして、意図的な問題行為が複数確認されれば、会社としては何らかの懲戒処分を行わざるを得ないのである。これは冷たい話でも、過剰に厳しい話でもない。組織活動の当然の帰結である。

「調べれば分かる」時代

 最近、メディアでも大きく報じられた事例がある。フジテレビの取締役による不適切な経費精算の問題である。

 フジテレビはA取締役が不適切な経費精算を行っていたとして、同日付で辞任したと発表した。公表された内容によれば、A氏は2020年以降、会食費や手土産代などについて、約60件、総額およそ100万円の経費精算を行っていた。その際、実際とは異なる相手先や人数で申請していたことが確認されたという。

 9月中旬に社内のチェックで問題が発覚し、その後、外部の専門家を含む調査を経て事実関係が確定した。本人も事実を認め、返金の意向を示したうえで辞任を申し出たとされている。本人は「私的な利用はなかった」と説明しているという(2025年11月7日読売新聞)。

 重要なのは、フジテレビの事案が「派手な横領」でも巨額な「私的流用」でもなかった点である。本人の説明どおりであれば、業務に関連する支出であり、金額も大きくはない。しかし、申請内容が事実と異なっている以上、それは不適切な経費精算であり、結果として取締役の辞任に至った。

 もう一点、極めて重要な点がある。この問題は、社内チェックをきっかけに、過去の経費精算データを整理し、事実関係を突き合わせることで確認された、ということである。

 行動の実態、会合の状況、経費申請の内容、関係者とのやり取り――これらを後から照合していけば、「説明がつかない点」は自然に浮かび上がる(例:人数合わせのために適当に名前を書いた同席者の部下がその日は地方に出張していた等)。つまり、本人が意図して隠したかどうかにかかわらず、調べれば分かる状態になっていたということだ。

 これはフジテレビに限った話ではない。立場が上であればあるほど、行動と説明の整合性は厳しく問われる。そして今後、同じ構造を持つトラブルは、確実に増えていく。