紙の時代と、データの時代は違う
こうした行為自体は、実は昔から存在していた。架空請求、偽接待、カラ出張、水増し請求といった問題は、どの時代にもあった。
ただし、昔と今とでは状況がまったく違う。かつては多くの書類が紙で管理され、行動記録も断片的だった。出費と業務内容を突き合わせて分析するには、膨大な時間と労力が必要になる。怪しいと感じても、調べきれない、あるいは調べること自体が現実的ではなかったのである。
しかし現在は違う。業務の進捗はデータ化され、日々の行動もログとして残る。誰が、いつ、どこで、何をしていたはずなのかという情報も、かなりの精度で把握できるようになっている。
そこにAIなどの情報技術を利用すれば、不自然なパターンや、他者とは明らかに異なる行動様式があったり、例外的な行動が集中していたりするなど、問題行動の特徴を容易に抽出できる。個人によるその種の不正は、「調べさえすれば、高い確率で判明する」時代に、すでに入っているのである。
「懲戒処分」が続出する時代へ
もう少し時間がたてば、状況はさらに変わるだろう。
経費や交通費を請求しようとした、まさにその瞬間に、他のデータと照合したうえで、「その請求は、これまでの行動データと整合していますか」といった警告が表示される仕組みが現実のものになる。そうなれば、「うっかり」や「いつもの癖」「これくらいなら」という行為は、その場で止まる。
不正の抑止力は飛躍的に高まるはずだ。ある意味では、できるだけ早くそのような時代が来てほしいのだが、そこまで完成度の高い仕組みが整うまでには、まだ少し時間がかかる。その過渡期において、何が起きるかはある程度予測できる。
何が起きるか――これまで不問に付されてきた、小さな不正による個人の利益獲得が、後からまとめて可視化され、その結果として懲戒処分を受ける人が続出する、という事態である。
ほとんどの会社は、こんなことで社員を懲戒処分したり、退社させたりしたいとは絶対に思っていない。会社は皆さんを守りたいと思っている。しかし、明確な証拠がそろってしまえば、何もしないわけにはいかない。それが現実なのだ。







