公正証書遺言は2人以上の証人が立ち合い、公証人が作成します。遺産の額によって手数料が異なりますが、私が経験した中では5万円前後が最も多いようです。万全を期すなら、遺言の作成を弁護士に委任し、弁護士に公証人に依頼してもらうという2ステップを踏めば完璧です!

鑑定料の相場は30万~40万円
しかも結果は神のみぞ知る

 一方、自分で書いて、タンスとかに入れておくのが自筆遺言です。自筆遺言は、家庭裁判所で「検認」というややこしい手続きを相続人がしないといけず、しないと刑事罰があります。ただ、最近の民法でこのあたりは改正されていて、自筆遺言もずいぶん利用しやすく改善されていますが、公正証書遺言の完璧さに比べたら、まだまだです。

 自筆遺言が残されていて、「この遺言書は親父が書いたものではない。筆跡が違う」と揉める場合があります。その場合、裁判で筆跡鑑定にまでもつれ込みます。

 裁判所は筆跡鑑定人の名簿を持っていてその中の1人を任命して鑑定するのですが、その判定が正しいかどうかは謎としか言えません。

 筆跡は時期によって変化します。30代の勢いのある時期の筆跡と、80代の筆圧の弱い時代の筆跡は違うのが当然です。

 筆跡鑑定では字のトメやハライについてまで細かく鑑定しているようですが、30代で書いた年賀状を持ってきて、遺言書とは違うと言われても本当のところは分かりませんし、別の人が鑑定したら違う結果になるのではないかと思います。

 ただ、信憑性は薄くても、裁判所が任命した鑑定人が出した判断なら絶対です。「王様は絶対」なのです。鑑定するには30万~40万円ほどのお金もかかります。

 遺言の信憑性を争って筆跡鑑定に出すのはもう一か八かの賭けのようなものなので、そこまでせなあかん必要に駆られる自筆遺言はいかがなものなのでしょうか。

父の遺産をすべて兄にとられては
かなわないと駆け込んできた依頼人

 公正証書遺言がいかに強いかが分かる事例を紹介します。以下は私がまだ駆け出しの弁護士だったころの話です。

 ある経営者が亡くなりました。妻はすでに亡くなっていたので、残された子ども4人(長男、長女、次女、次男)で遺産を相続することになりました。亡くなった方は手広く事業を営み莫大な財産を持っていて、遺産分割すれば子どもたちがそれぞれ数億円の金銭や不動産を相続することになります。

 しかし、長男が遺産を独占していて、遺産分割の話し合いを申し入れても無視され、なかなか相続の話が進まず、困った長女(A子さんとします)が私の事務所に相談に来られました。