私は長男に手紙を送りましたが無視されたので、しかたなく、依頼者が遺言はないとおっしゃっていたので、家庭裁判所に遺産分割調停を起こすことにしました。
準備をし、調停を申し立て、1回目の調停を迎えるのに約2カ月かかりました。調停の場で長男(仮にB夫さんとします)の顔を初めて見ましたが、B夫さんは驚くことに私に向かって、「遺言があるんじゃあ~!」と、遺言書をテーブルに叩きつけたのです。
遺言がなければ、法定相続分で分けるので分け方を話し合うために遺産分割調停を起こす必要がありますが、遺言がある場合は遺言のとおり分ければいい話なので、遺産分割調停は用無しとなります。
ついつい、私は次のように言ってしまいました。「2カ月の準備無駄や~ん。遺言あるならはよ言うてよ~」
公正証書遺言が左右する
2億5000万円の行方
私は投げつけられた遺言書を確かめてみました。それは公正証書遺言でした。その遺言書には「長男のB夫さんにすべてを相続させる」という短い文章と日付が書かれていました。
私は半ば落胆しながらその場にいたA子さんにその遺言を見せました。すると、A子さんは、「その日なら、お父さんもうボケてた。そんな遺言書けるわけない!」と言いました。
そこで、残念ながら調停はいったん取り下げ、私はお父さんが入院していた病院のカルテを取り寄せました。弁護士は「23条照会」といって弁護士会を通じて病院のカルテを見ることができるのです。1カ月ほどして私の事務所にカルテが届きました。
どきどきしながら開けると、全部ドイツ語で読めない(驚)。そこで翻訳に出しました。数週間を経てようやく日本語訳が返ってきました。またどきどきしながら翻訳されたカルテの遺言当日のページを開けてみました。
すると、その日の欄には、「『警察が来てわしを殺そうとしている』と叫んで暴れるのでベッドに拘束して縛りつけた」と書いてあり、すでにかなり認知症が進んでいることが記録されていました。私は「勝てる!」と思いました。







