公証人の多くは裁判官の定年退職後の天下りです。今回の公証人は裁判官時代、今回の裁判官の先輩だったようです。私は膝から崩れ落ちました。「そんなん無効になるわけないやん~~」

逃げ場のない尋問で
遺言者の意思能力を究明

 それでも悪に屈するわけにはいきません。裁判官の良心を信じて徹底的に尋問することにしました。

 私が公証人に「遺言を作成するときに遺言者の能力、意思能力がどうだったか主治医に確認しましたか」と尋ねると、「していません」と言いました。重ねて、「認知症では長谷川式スケールのような認知症の度合いが分かる検査がありますが実行しましたか」と言うとそれも「していません」と答えます。

 ではどのようにして公正証書を作成したのかというと、「B夫さんが下書きを持ってきてこれで作成して欲しいと頼まれた」とのこと。そして、それを当日お父さんに読み聞かせしたら、ウンウンとうなずいていたので、それだけで意思能力を確認するようなことは何もせず作成したと、ぬけぬけと証言しました。

 私は尋問でやれることをやりきったと感じ、これで遺言有効の結論はあり得へんやろーと思いました。

 しかし、2カ月後に送られてきた判決文を見るとなんと「遺言は有効である」と書いてありました。敗訴したのです。私は、「どんな理由で敗訴なんじゃあ~」と思いつつ、判決文の理由のページを見ました。

 そこには、「たしかにカルテを読めば当日、警察が来て自分を殺すと暴れていたという記載がある。しかし、老人にはまだらボケというものがある。公証人が面会したときはしっかりしていたとおっしゃってるんだから、遺言作成の時間はしっかり意思能力があった可能性が捨てきれない」と書いてありました。

 その後、高等裁判所から最高裁判所へ上告しましたが全部敗訴しました。結局、裁判官は自分の天下り先である公証人が作成した公正証書遺言を無効にすることなんてないんだな~と思いました。

 若き私は思いました。「遺言作るときは絶対公正証書にしよう」と。