なぜ日本人は「完璧な英語」を
目指してしまうのか

 大谷選手のスピーチには、細かく見れば文法的に不自然な箇所もあります。しかし、そんなことは誰も気にしていません。なぜなら、彼のメッセージは確実に届いているからです。

 最も印象的なのは、アメリカ文化における「具体的に名前を挙げて感謝する」という慣習を完璧に実践している点です。日本では謙遜から個人名を避けることもありますが、大谷選手はオーナーのMark Walters、フロントのAndrew FriedmanやLon Rozen、エージェントのNez Baleloとその妻Liz、さらには裏方スタッフのAl Garciaまで名前を挙げています。

 また、1986年のニューヨーク・メッツチームへの言及も見事です。(※当時、圧倒的な成績でワールドシリーズチャンピオンに輝いた)

 I now know the feeling of what it's like to become a world champion, and it's great.
(ワールドチャンピオンになるとはどういうことか、今では私も分かります。最高の気分です)

 会場にいる先輩たちへの敬意を示すと同時に、共通体験を通じて距離を縮める効果があります。

 日本人の多くは、完璧な文法や発音を身につけてから英語を話そうとします。TOEICで高得点を取ってから、英検1級に受かってから、もう少し単語を覚えてから――などと自分に言い訳をしてしまいます。

 しかし大谷選手のスピーチは、多少の文法的な不自然さがあっても、文化を理解し、心からのメッセージを届けることの方がはるかに重要であることを示しています。