イランの反撃能力も大きな打撃を受けた。特に、イランの革命防衛隊の最高幹部の多くが一網打尽にされた。イスラエルはイラン軍事部門の戦闘能力を組織面、統制面で相当程度弱体化させた可能性が高い。中長期的ならともかく、短期的にはイランが戦争前の組織的戦闘能力を回復することは難しいだろう。

 ハマスによるガザでの奇襲作戦の成功は、イスラエルの徹底的な反撃を招き、結果的には失敗に変わったのだ。

イスラエルの最大の成果は
米国を巻き込んだこと

 第一の勝者は当然、上記の多大な損失をイランに与えたイスラエルだ。2023年のハマスによる奇襲作戦を未然に阻止できなかったことは事実だろう。しかし、「12日戦争」の結果、イスラエルは長年追求してきた「イラン・イスラム体制」の弱体化にある程度成功したからだ。イランの戦闘能力の回復にはかなりの時間が必要だろう。されば、イスラエルの軍事的優位は当分続くと見るべきだ。

 これとは別に、今回の「12日戦争」によりイスラエルが得た最大の成果は、米国を巻き込んだことである。あれほど対イラン軍事介入に否定的だった米国大統領に、米軍による対イラン軍事介入を決断させたのだから。

 今回の米軍による攻撃は、イラン領内への地上部隊投入を含む本格的作戦ではなく、バンカーバスター爆弾による空爆という、あくまで限定的な、いわゆる「外科手術的作戦」であった。それでも、アラブ諸国の対米観に与えた衝撃は決して小さくないだろう。

 勿論、第二の勝者は米国だ。トランプ政権は、6月21日のイラン核施設空爆作戦以外に、直接軍事介入はしていない。それでも、中東におけるイラン・イスラム共和制の影響力を一時的にせよ低下させたことは間違いない。

 他方、空爆の目的とされたイランの「核開発能力」は完全には破壊されていないようだ。イランの「ブレイクアウトタイム(高濃縮ウラン製造までの期間)」は攻撃前後で変わっていないとの分析もある。