歴史的に見れば、「ガザ紛争・12日戦争」の最大の敗者は、「アラブ民族主義」と「イスラム主義」である。
一連の戦いでイランのシーア派・イスラム共和制は大きな打撃を受けた。スンニー派ムスリム同胞団系のハマスやシーア派ヒズボラといった「イスラム教に基づく統治」勢力も勢いを失った。これはイスラム勢力にとって、1979年のイラン革命以来、最大の敗北であろう。
イスラエルとアメリカは
イランに勝ち切れない?
以上の通り、短期的に見れば、「勝者」はイスラエルと米国、である。
だが、中長期的にイスラエルや米国が「勝者」であり続ける保証などどこにもない。政治の世界では、作用があれば必ず反作用がある。ある段階で「勝利」を得ても、それ自体が次の「敗北」の原因となる可能性すらあるからだ。
仮に「敗北」しなくても、長期的に「利益」より「損害」が大きくなることも中東では多々ある。このことを我々は忘れるべきではない。
『中東 大地殻変動の結末 イスラエルとイランをめぐる、米欧中露の本音と思惑』(宮家邦彦、中央公論新社)
イスラエルはガザでハマスに軍事的には勝利しつつある。しかし、その結果、6万人以上のパレスチナ人死者が出ていることは、必ずしも長期的な勝利に結びつかない。
仮に、こうした戦闘行為が「ジェノサイド」に該当しないとしても、それで人道的な問題が消える訳ではない。そもそも、軍事的「勝利」だけで政治的「敗北」を回避することは難しい。その典型例が、欧州主要国のパレスチナ国家承認に向けた動きである。
米国とて同様だ。圧倒的な軍事的優位でもイランの核関連施設を全て破壊し尽くすことは難しい。軍事的な脅威を測る指標は、「能力」と「意図」の掛け算といわれるが、核兵器製造「能力」は破壊できても、核兵器製造を目指す「意図」までは破壊できない。「能力」は物理的問題だが、「意図」は心の中の問題だからだ。
仮に、核開発の「意図」まで消し去ろうとすれば、恐らく結果は正反対となる。今後イランが核兵器製造の「意図」を不可逆的なレベルにまで強める恐れは十分あるだろう。







