弱い光ではヒトの眼は光りません。一方、輝板を持つ動物に強い光をあてると輝板と網膜の反射光が混ざって見えるので、複雑な色になります。

 スポットライト調査で数えたシカの数を実際の生息数として扱うことはできません。どのくらい見落としているのかがわからないからです。

 でも、同じ方法で繰り返し調査を続ければ、増えているのか、減っているのかについては自信をもって判断できます。研究チームは、利用できる全てのデータを参照し、個体群生態学の理論や技術を使って、エゾシカ個体群の変動を予測する手法を開発しました。

 この手法を使うと、捕獲量に従ってエゾシカ個体群がどのくらい増減するのかを予測でき、生息数を半減させるとか3分の1にするなどの目標を定め、目標達成に必要な捕獲数を算出することができます。

フィードバック管理によって
野生動物個体群の変動を予測

「匙加減」ではなく、個体群をモニターし、予測値に基づいて捕獲数を調整する体制が整えられました。個体数の推定値が目標数よりも多かったら捕獲圧を高め、目標数を下回ったら保護するように、効果に応じて捕獲数を調整するフィードバック管理が1998年に野生動物に対して初めて導入されたのです。

 フィードバック管理は、個体数を一定に保つことはできませんが、目標数の周辺で維持することができる実用的な方法です。現在では多くの野生動物の管理計画に採用されています。

 フィードバック管理によって野生動物個体群を目標数に誘導できる枠組みができました。では、目標数はどのように定めたら良いのでしょう。

 エゾシカの研究チームは、被害量が増え、社会問題となった時の個体数指数を半減させることを目標としました。この目標には、農業被害が問題とならない水準にするという論拠はありますが、適正であるという科学的な裏づけはありません。科学的な根拠を示すことができたのは、エゾシカを二度と絶滅の淵に追い込まない下限水準だけでした。