出生率を上げるだけでは解決しない?多くの人が見落としている人口問題の本質写真はイメージです Photo:PIXTA

少子化が進むなかで、結婚や出産は個人の選択と言われるようになった。しかし、その選択は本当に一人一人にとって望ましい条件のもとで行われているのだろうか。北海道大学名誉教授の齊藤隆氏は、人口問題を出生率の数字だけで捉えることに疑問を投げかける。多くの人々が将来に希望を持てる社会の実現に必要な視点とは。※本稿は、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター名誉教授の齊藤 隆『動物たちの「増え過ぎ」と絶滅を科学する』(ミネルヴァ書房)の一部を抜粋・編集したものです。

個人の自由が尊重される時代に
隠れている“本当の選択”とは?

「結婚する・しない」「子どもを持つ・持たない」という選択を自分でできる社会になりました。個人の自由な選択がかなり保証されるようになったと思います。でも、その選択は望ましい条件でできているでしょうか。本当は別の選択肢を望んでいたのに仕方なく選んでいることはないでしょうか。

「結婚すること」「子どもを持つこと」を望んでいるのだけれども、環境が許さないために「持たないこと」(結婚しないこと)を選んでいるならば、環境が望む方向に変われば、「持つこと」を選ぶようになるでしょう。

 望ましい環境を整えようと、低出生率に悩む国や地域は様々な少子化対策を実行してきましたが、決定打はありません。労働力の確保や経済規模の維持のためという集団の論理から進められる施策は、個人の願いとすれ違っていきます。