ルピーがアジア最弱となった
2つの背景とは

 為替については、高市政権以降、日本でも円安が進展したが、足元の動向をみるとインド・ルピーの下落ペースは速い。アジアの他の新興国通貨と比べて、2025年のルピーは、最弱のパフォーマンスであった。

 このためインド準備銀行は「過度な変動の抑制」を掲げ、断続的な為替介入で相場の急変を抑えてきたが、2026年に入ってもルピーは1ドル=90ルピーを上回る歴史的な安値圏に沈んでいる。

 このルピー安の背景にあるのは、第一に金融政策である。インド準備銀行は、2025年1月時点に6.5%だった政策金利を12月までに5.25%へと4回の利下げを実施した。米ドルとの金利差縮小が、持続的な通貨安圧力となった。

 第二に貿易赤字である。インドは、エネルギー、原料、工業製品の輸入が大きく、貿易収支は赤字基調である。特に景気が持ち直す局面では、輸入の勢いが増し、赤字が拡大する傾向にある。貿易統計によれば、2025年の財貿易赤字は2828億ドルと過去最大に拡大した。こうした実需面での外貨需要がルピーへの下押し圧力となった。

トランプ政権の逆風が
ルピー安を加速

 対米関係の悪化も2025年のルピー安を加速させた。トランプ大統領就任(2025年1月20日)後、モディ首相は2月に訪米し、二国間貿易協定交渉を本格化、2025年秋までに第一弾合意を目指す方針を示した。4月には米国が相互関税を打ち出し、インドは早期妥結候補と目されたが、協議はインドの農産品市場アクセスなどを巡って停滞した。

 8月には、米国は、相互関税(25%)に加えて、ロシア産化石燃料の輸入継続を理由とする追加関税(25%)を決定した。これにより、インドからの製品に対する関税は、50%追加と大幅に上昇した。