インフレの再燃懸念は、2026年末に向けて、顕在化する可能性が高い。食料価格のベース効果は徐々に薄れていき、2026年10月にはGSTの税率変更に伴う一時的な物価押し下げも剥落する。原油価格も下落が持続するとは限らず、エネルギー価格の下押し圧力も弱まる可能性が高い。
加えて、ルピー安による物価上昇圧力も徐々に強まっていく。この間の為替レートの下落をインド準備銀行の予測モデルに当てはめると、2026年後半以降に消費者物価の前年比を0.7%ポイント程度押し上げる可能性がある【3】。
インフレが想定以上に高まれば、家計の実質購買力を毀損(きそん)させ、これまで成長を牽引してきた個人消費を冷え込ませる直接的な要因となる。金融政策面でも、金融引き締めへの転換を早めざるを得なくなる。
また、インフレの再燃は、財政面での脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにする可能性がある。国と地方などを合わせた一般政府の債務残高はGDP比約80%と高水準にあり、2025年度の財政収支もGDP比▲7.9%と赤字基調が定着している。ルピー安が輸入コストを押し上げる局面では、燃料や肥料の購入補助に伴う支出の拡大や、金利上昇による利払い負担の増加など、財政の圧迫要因が膨らむ。
こうした財政懸念が市場で材料視されることで、財政プレミアムの上昇を招き、通貨安が止まりにくい悪循環が醸成される。好調を維持しているインド経済だが、通貨安とインフレの連鎖が経済成長にブレーキをかける大きな懸念材料となるだろう。
【3】John, J. et al. (2023). A Recalibrated Quarterly Projection Model (QPM 2.0) for India. RBI Bulletin, February 2023.
(伊藤忠総研主任研究員 浅岡嵩博)








