若手社員は、焦らず、ステップを大切にしていきたい

 現在はタイパやコスパが重視される時代です。しかし、「まわり道」に思えても、段階的に進めた方が、結果的に、目標達成への近道となることがあります。段階を踏むことの大切さを示す典型的な事例は、メジャーリーグで前人未踏の記録を打ち立て続けている大谷翔平選手のケースです。当初、大谷選手は、日本の野球界を経ることなく、高校卒業と同時にメジャーリーグに行くことを考えていました。しかし、最終的に、日本球界で経験を積み、実力をつけたうえで、メジャーリーグにチャレンジしました。米国球界からのスタートだったら、栄光をつかむ前に挫折していたかもしれません。目標を早く達成したいという思いで、焦って一足飛びに進もうとするのではなく、ステップを踏むことの大切さを物語っています。

 近年の生成AIの進化は目覚ましく、調査に要する時間が短縮し、また、文書作成においても、一定レベルのものが瞬時にできあがることに驚きを覚えます。大学生が企業に提出するエントリーシートにもAIを活用したケースが見受けられるようになっています。ただ、AIによる文書は論理的である一方で、不自然に整っており、そうした文書は人間の感性への訴求力が弱いように私は感じます。AIが進化し、何でも効率的に調べられるいまの時代だからこそ、人間的な「まわり道」的行動やその人ならではの泥臭い経験、ときには挫折経験こそが必要ではないでしょうか。

 若手社員は、焦らず、ステップを大切にして、目の前の仕事に人間らしく汗をかいて取り組むことを通じて、基本的なコミュニケーション力の向上を目指しましょう。「検索」だけに頼るのではなく、「探索」を意識した行動や経験が成長をもたらし、将来のキャリアを豊かにします。企業の人事担当者や管理職には、若手社員が社内でさまざまな経験に取り組める環境や勉強の場の設定が求められます。もちろん、個人は、上司や会社の制度に全面的に依存するのではなく、継続的な自助努力が必要です。

 では、個人として、社内でどのようにコミュニケーション力を磨いていけばよいでしょうか。