貝印からの学び
デザインとマーケティングを束ねて、顧客を見る 

 貝印の鈴木曜さんは、CCO(チーフクリエイティブオフィサー)とCMO(チーフマーケティングオフィサー)を兼任するという、極めてユニークなポジションにある。これは、クリエイティブやデザインとマーケティングは融合するべきであり、それを実現できる組織をつくるべきだという、鈴木さん自身の考えに基づくものだ。

 デザインとマーケティングは、顧客に深く向き合い、ブランド価値を創出するという点で役割を同じくする。異なるのはそのアプローチの方法である。私の言葉でいえば、デザインは情緒的な判断によってブランドを形作り、マーケティングはロジカルな判断によってブランドの方向性を定める。その二つのアプローチが一体となることで、ブランド価値を向上させるシナジーは一気に高まる。鈴木さんは、デザインの「幅」をブランド全体へと広げる体制を構築したといえるだろう。

 さらに鈴木さんは、「デザイナーが手を動かし、目に見えるプロトタイプを作って、それを示してフィードバックを得る」という方法論を大切にしている。それを繰り返すことで、事業部や経営層にデザインの力を具体的に理解してもらうことができると考えているからだ。

 「ものをゼロから生み出す」というデザインの本来の力によって、領域を超えて価値を広げていく。デザインの「幅」を広げるとはまさにそうした営みであり、それは広い視野を持ったデザイン人材にしかできないことだと思う。

デザインは、どこまで機能を広げられるのか――射程をプロダクトから事業・組織へ拡張するための設計力JUN KATSUNUMA
多摩美術大学卒業。NECデザイン、ソニー、自身のクリエイティブスタジオにてプロダクトデザインを中心に、コミュニケーション、ブランディングなど、幅広くデザイン活動を行う。国内外デザイン賞受賞多数。デザイン賞審査員も務める。2020年NEC入社、デザイン本部長として全社デザイン統括を行う。2022年度よりコーポレートエグゼクティブとして、経営企画部門に位置付けられた全社のデザイン、ブランド、コミュニケーション機能を統括。2023年より現職。