「デザインの拡張」を支えるCDOの資質とは
守備範囲ではなく、設計力だった

 本連載の当初、私はCDOに求められる「幅」とは、多様な領域にデザインを適応させるための対応力であり、専門分野に閉じない視野の広さだと理解していた。デザインの役割が拡張する中で、CDOにはその拡張に耐え得る守備範囲の広さが必要だ――それが出発点だった。

 しかし、複数の企業への取材を重ねる中で、その理解は次第に更新されていった。見えてきたのは、「幅」とは単にデザインの適用先が多いという意味ではない、ということだ。デザインは決して万能な手段ではなく、どこにでも無条件に効くわけでもない。むしろ重要なのは、どの領域でデザインが本当に力を発揮できるのかを見極め、そのための条件を整えられるかどうかである。

 各社の取り組みに共通していたのは、デザインを「使える」状態にするための工夫だった。それは、組織の仕組みとしてデザインを組み込むことかもしれないし、役職や権限の設計によって推進力を与えることかもしれない。あるいは、文化として社員に浸透させることや、経営トップの意思としてトップダウンで進めることもある。形は異なっていても、デザインが機能するための道筋が、必ず設計されていた。

 デザインが「ここにも有効だ」「あそこにも活用できる」と語ること自体は、決して難しくない。しかし、それを実際の事業成果や組織の変化につなげるためには、有効である理由を説明し、実現までのプロセスを描き、現場で実装させる力が不可欠になる。今回の対話を通じて、私はその点を強く実感した。

 こうして振り返ると、「幅」という軸は、当初想定していた対応領域の広さから、デザインを適切な場所に適切な形で適用するための設計力へと意味を深めたといえる。デザインの可能性を語るだけでなく、それを現実の価値へと変えていく。その力こそが、一連の対話を経てより鮮明になった、CDOに求められる「幅」なのだと思う。