多くの人が立っているのは
「今日・明日」を考える低層階

 人は経済的に余裕がない状態にあるとき、どうしても思考が「今日どうするか」「明日どう乗り切るか」に集中します。生活費、仕事、目の前の課題に追われ、来週や来月のことを考える余裕すら持てない状況も少なくありません。

 これは個人の能力や性格の問題ではなく、環境によるものです。時間軸が短くなるのは、自然な反応といえます。

 少し経済的に余裕が出てくると、思考の射程は来月、3カ月後、半年後へと広がっていきます。多くのビジネスパーソンは、このあたりの階層で日々の判断を行っています。

 一般的に富裕層と呼ばれる人々も、多くの場合、半年後から1年後、長くても3年後から5年後程度を見据えて意思決定をしています。投資であれば中期的なリターン、事業であれば次の決算や数年後の業績を基準に判断します。

 この段階でも、すでにエレベーターには乗っています。しかし、あくまで低層階から中層階にいる状態であり、見える景色には限界があります。

超富裕層が見ているのは
20年後、30年後の景色

 金融資産5億円以上の超富裕層になると、時間の捉え方が根本的に変わります。

 彼らが前提としている時間軸は、20年後、30年後、場合によっては50年後、さらには100年後です。

 例えば投資判断において、一般的な富裕層が「この投資は3年でどれくらい増えるか」と考えるのに対し、超富裕層は「この資産は30年後にも価値を持ち続けているか」「次の世代にどのような意味を残すか」という問いを立てます。

 価格の上下や一時的な利回りは、判断材料の一部にすぎません。重要なのは、その資産が長い時間の中で役割を果たし続けるかどうかです。

 事業経営においても同様です。一般的な事業オーナーが3年後、5年後の業績や事業価値を意識するのに対し、超富裕層の事業オーナーは、事業の寿命そのものを考えています。

 この会社は自分が経営から退いた後も存続できるのか。後継者に引き継がれたとき、社会にどのような価値を提供し続けられるのか。そのような視点で意思決定を行っています。