後払いのメリットを活かした
柔軟な運賃設定の導入例も
まだ本格的な導入例は少ないが、後払いならではのメリットとしてフレキシブルな運賃設定がある。ほとんどのICカードは事前にチャージして利用するプリペイド式であり、乗車ごとに運賃を差し引くため、割引は乗り継ぎなど一部に限られる。
一方、後払い=ポストペイ式は後日まとめて請求されるため、利用回数・形態に応じた割引を柔軟に適用できる。日本初のポストペイ式ICカード「PiTaPa」は2004年に登場しており、決して短くない歴史があるが、専用カードの作成が必要なこと、割引サービスが分かりにくかったことなどから普及しなかった。
その後はSuicaを中心としたプリペイド式の一強となり、ポイント還元を組み合わせることで割引の制限をカバーしてきたが、そのための会員登録、ICカードとの紐づけ、ポイント管理はシンプルというプリペイド式の利点と反するものだった。
そこでタッチ決済は分かりやすさで攻勢をかける。例えば、福岡市地下鉄では、1日あたりの請求額を1日乗車券と同額の640円まで、1カ月あたりの請求額も全線乗り放題定期券(1カ月)と同額の1万2570円までとする割引制度を導入している。
関東では横浜市営地下鉄が2025年3月、新交通ゆりかもめが同年7月、同じく1日あたりの請求額に上限を設けた。事前に1日乗車券を買うか迷わなくても、結果的に一番お得な形になるというのは非常にありがたいサービスだ。
現時点では地下鉄や新交通システムなど、回遊性の高い都市交通に限られているが、南海は昨年12月1日から3月末まで、請求額の上限を1日最大2200円とする実証実験を実施中だ。
同社は狙いを「年末年始を含む冬の観光シーズンに、関西空港から来られるインバウンドのお客さまや、国内のお客さまが大阪・なんばエリアや世界遺産の高野山などを巡る際に、便利にご利用いただきたい」と説明する。
本線の最長区間・難波~和歌山市間と難波~関西空港間は往復1940円、高野線の最長区間・難波~極楽橋間は往復1860円であり、元を取るには綿密な計画が必要となるが、私鉄でも定着するか注目したい。
関東11社局の「後払い乗車サービスの相互利用」は、現時点で上限制など割引サービスを設定していない。東京メトロは「今後の展開は未定だが、後払いを活かしたサービスを検討していきたい」と述べ、将来的な導入には含みを持たせた。







