AIは、ほぼすべてのものの価格を下げることによって富を生み出す、と彼は論じる。「十分な性能を持つAIが『労働市場に参加』すれば、(商品とサービスのコスト要因である)さまざまな労働の対価がゼロに近づくだろう」としている。
「AIが商品とサービスのコストを下げるのは、サプライチェーンの多くの段階で、労働がコストのカギを握るからだ。ロボットが誰かの所有する土地で、太陽光発電を利用して天然資源を採掘、精製し、それを使って家を建設すれば、住宅建設コストはロボットのリース料に向かって低下していく。
そしてロボットが別のロボットによって製造されるようになれば、ロボットのリース料は人間がロボットを製造した場合よりもずっと安くなるだろう」
AIは商品やサービスの価格を
すべて安くできるのか?
残念ながら、AIによってコストが下がらないものの筆頭に、供給量が限られた「土地」がある。それどころかAIは、アルトマンが知事選出馬を検討していた4年前の2017年に政策の最優先課題に挙げた、手頃な住宅不足の問題を大幅に悪化させるおそれがあった(編集部注/カリフォルニアでは不動産価格が高騰しており、アルトマンは同州知事選挙で慢性的な住宅危機問題の緩和を訴えるつもりだった)。
その解決策として彼が示したのは、19世紀のジャーナリストで政治経済学者、ヘンリー・ジョージが唱えた、不平等を是正するには労働への課税をやめ、土地だけに課税するのが一番だという思想だ。
ジョージの言う「地価税」の基盤にあるのは、土地の価値は、その周辺で行われる経済活動ーー人々が建設した道路や、人々が始めた事業ーーによっておおむね決まるため、それらに貢献した社会全体によって分かち合われるべきだ、という考えである。
この「ジョージ主義」と呼ばれる思想には、イギリス首相ウィンストン・チャーチルからサンフランシスコ市長ウィリー・ブラウンまで、多くの支持者がいる。
アルトマンはそれをさらに発展させた、「YC主義」(編集部注/アルトマンは、スタートアップ企業向けの投資集団であるYコンビネータ元代表。YCは、画期的技術を開発する可能性を持つ企業への資金提供を増やし、世界に変革を起こすハードテックの実装を促す構想を抱いていた)とでも呼べる方式を提唱した。







