無料でお金をもらえるとあって、数百万もの人が登録した。だが当然ながらこの試みはたちまち物議を醸し、プライバシーが保護されるのかという懸念や、貧困国の人々を登録させようとする植民地主義的慣行だという批判が寄せられた。

書影『サム・アルトマン「生成AI」で世界を手にした起業家の野望』(キーチ・ヘイギー著、櫻井祐子訳、NewsPicksパブリッシング)『サム・アルトマン「生成AI」で世界を手にした起業家の野望』(キーチ・ヘイギー著、櫻井祐子訳、NewsPicksパブリッシング)

 フォーブス誌にリークされた2023年の「ワールドコイン社員サミット」の音声録音によると、アルトマンが当初ワールドコインに持っていた目的は、彼のこんな信念から生まれた。

「わが国の中央機関である強力な政府は、これからますます力を失うか、ますます質が悪くなるかのどちらかだ。これまで国民国家が達成していた目標の一部を、テクノロジーがどれくらい実現できるのかを知るために、実験するのもおもしろいと思った」

 同じサミットで、アルトマンは同年に正式に発行したワールドコインが、パスポートなどの政府の識別システムの役割を肩代わりできることに感嘆してみせた(ただし規制当局が仮想通貨に比較的保守的な姿勢を取っているために、現時点ではアメリカ国内で利用できない)。

「ワールドコインが政府の許可なしに世界規模でこうした役割を果たせると思うと、心が躍るね」