日本の法律では弁護士の独占業務が決められていて、一般の人がこれを行うと非弁行為として違法になります。退職代行サービスの場合、退職手続きを代行するのはいいのですが、話がこじれた場合に交渉するには弁護士の資格が必要になります。
それで実際の退職代行サービスの現場では、そちらの方向に話が進んだ場合には弁護士を起用する必要が発生します。ブラック企業が未払い給与を支払わなかったり、逆に退職者に損害賠償を請求してくるような場合の交渉です。
それで退職したい人に弁護士を紹介するとします。その際に弁護士から紹介料を受け取ると法律違反になって逮捕されてしまいます。
報道によればモームリの社長は、紹介料ではなくウェブ広告の業務委託費や労働組合の賛助金として対価を受け取るスキームをとっていたと報じられています。これを警察は実質的な報酬だと判断して今回の逮捕に至った様子です。
さて、興味深いのはここからです。逮捕の翌日、アメリカのAI大手アンソロピックは「Claude Cowork」というAIサービスに法律や財務の専門業務に対応する機能を付け加えたと発表しました。法律分野ではAIに大量の契約書や訴訟資料を一気に読ませて分析できるようになります。
その結果、サービスナウのように電子契約書の手続きを行うサービスを提供してきたIT企業がこのままだとAIに飲み込まれそうだという話になり、アメリカの大手SaaS株が軒並み下落しました。
アンソロピックはこのサービスでは法律アドバイスは提供しないと明言しています。最後に判断するのは人間だという意味です。しかし当然ながらAIが急速に進化している以上、使い方次第で非弁行為のグレーゾーンを侵食し始めます。
日本の場合、2023年の法務省のガイドラインでは契約書のひな型を提供したり、標準契約のレビューまではAIが行ってもOKです。しかし個別具体的な紛争事案でレビューしたAIが、条項の修正提案や法的見解を生成するようになると日本ではアウトになります。
この状況はAIの性能が幾何級数的に進化する以上、利用はグレーゾーンに向けて進むはずです。たとえば今、生成AIを話し相手にする人が増えています。生成AIが人生相談に乗るのはいいのですが、離婚や相続についてAIが利用者の相談に答えるうちに、回答次第で非弁行為に抵触します。







