もちろん利用者の側は罰せられませんが、AIサービスの提供側が対価を受け取って個別具体的な個人の悩みに対して法律面に踏み込んだアドバイスをするのは日本では違法です。

 それでもしそうなった場合、アメリカのAI企業はこう言うでしょう。

「法律相談に対しての対価はとっていません。利用全般へのサブスクとしてしか対価は受け取っていないのです」と。

 弁護士のあっせんについても今後は問題が起きるでしょう。というのもこの先、世界は本格的なAIエージェント時代を迎えます。そのような未来で仮にわたしたちが何かとんでもないトラブルに巻き込まれたとして、その分野が得意な弁護士はそれほど多くないとします。本当はここがAIエージェントの最良な出番です。過去の裁判記録を読んでその領域の経験のある弁護士を探してくれたら私たちにとっては心強いはずです。

 しかしそのAIエージェントが紹介料を受け取ると、社長が逮捕されるリスクが発生します。

「いえいえ紹介料はとっていません。広告料ですよ」と言っても警察は許さないでしょう。日本のAI企業が開発した企業の場合には。ここで問題になるのは日本の警察はアメリカのAI企業の社長を同じように逮捕できるのかどうかです。 

 実はAIについては米中と日欧で政策が違います。アメリカと中国は法律のグレーゾーンについてはAIの進化を容認しながら、問題が起きた場合に後から規制を考えるスタンスです。一方で日本や欧州はリスクを重視してグレーゾーンを問題視する傾向があります。

 つまり米中企業がグレーゾーンに対してアクセルを踏み込む一方で、日本政府は日本のベンチャーが起こすイノベーションにはブレーキを踏む傾向がある。ここが問題の本質です。

 思い出していただきたいのですが、この話はモームリの社長を擁護する話でも、アンソロピックの社長を非難する話でもありません。日本国内になぜ投資が向かないのかという話です。

 退職代行というジャンルが好きか嫌いか、読者の判断もわかれるところだと思いますが、現実には「ものすごくたくさんの労働者がこのようなサービスを使わないと救われない」という実情があります。それを発見した起業家が退職代行サービスに投資をしてきました。モームリだけではなく、業界にはたくさんの企業が参入しています。